岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

theater somewhere

地元の人たちから愛されてきた駅前ミニシアター。

2024年03月25日

チネ・ラヴィータ(宮城県)

【住所】宮城県仙台市宮城野区榴岡2-1-25 BiVi仙台駅東口2F 
【電話】022-299-5555
【座席】3スクリーン・211席

多くの乗降客が行き交う東北最大のターミナル駅…仙台。駅前から官庁街に掛けて、休日は観光客やショッピングを楽しむ人々で賑わい、平日の夕方は学生や仕事帰りのOLとサラリーマンで駅前は活況を呈する。観光客が多い西口に比べて、バスターミナルの機能を有する駅東口は地元の人たちが多い。そんな駅前にあるBiVi仙台駅東口店2階にある3つのスクリーンを有する映画館「チネ・ラヴィータ」が、入居する施設の賃貸契約満了に伴い今年の3月をもって閉館することとなった。館名はイタリア語で、「あなたの人生に映画を」という意味を持つメジャー系も上映するミニシアターで、とても居心地の良い駅近の映画館だ。かつて仙台市内で強い集客力を誇っていたミニシアター「シネアート」が、映画館事業から撤退するとなり、駅の反対側にあるフォーラムネットワークが運営するミニシアター「フォーラム仙台」がそのまま運営を引き継いだ。

館名は変わっても今までの常連客はそのままで、順調に運営していたが、ビルの老朽化に伴う建て替えによって、出て行かざるを得なくなった。そこで現在のビルにあったゲームセンターが縮小してフロアの一角に空きスペースが出来た場所に、「チネ・ラヴィータ」は、2009年8月8日にオープンした。エスカレーターで2階にあがるとすぐ目の前がエントランスになっている。木の風合いが落ち着く受付で、チケットを購入してロビーの奥へ進む。適度に死角となっている休憩スペースで、上映までの待ち時間を誰に遠慮する事なくゆっくりと過ごす。本来が映画館として作られたわけでは無いので天井の高さが低いのだが、そのハンデをここでは見事にアイデアで解決している。まず場内に入ると最前列の座席に驚かされる。まるで座椅子のような低い座面は本来のシートの脚を短く切っているのだ。ちょっと足を投げ出すような感じで腰掛けられるので、敢えてこの席を好まれる常連も多い。足を伸ばして大画面を満喫出来る最前列は映画館のスタッフさんお勧めの席でもあった。

平日の夕方になるとチラホラ学生の姿が目立ってくる「チネ・ラヴィータ」は、駅前という事もあってか比較的年齢層は若い。エンターテイメント性の高い作品をやっている隣で、ミニシアター系の作品を上映しているため訪れるお客さんも千差万別で年齢も性別もバラバラなのだ。共通しているのは、ここで上映されている映画に全幅の信頼を寄せている事だ。シネコンのような人混みはちょっと苦手…というお年寄りには規模感が重宝がられている。他の地域と違って仙台では作品で棲み分けというよりも、自分に合った雰囲気でお客様が映画館を選んでいるようだ。ちなみにコチラでは上映作品を選ぶ基準というものは無いという。ゆっくりと自分のペースで映画を観たいというお客様が多いから面白そうな映画ならば何でもやるというのがスタンスだ。若者がたくさん来るかと想定されていた作品に、意外にもご年配の方が多く来場される事もあるそうだ。

ミニシアターとしてスタートして、来場者のニーズに合わせて面白い作品なら何でも上映してきた「チネ・ラヴィータ」。アクセスの良さから幅広い年代が利用しており、かなりエッジの効いた作品でも年配の方が観に来る。面白い作品を落ち着いて観られる環境を提供する事に重きを置いているため、敢えて映画館のカラーでカテゴライズする事はしない。アート系でもメジャー系でも、そして上映が危ぶまれる問題作でも観る価値がある…と思った作品を積極的に紹介し続けてきた。仕事や学校の帰りにちょっと寄り道感覚で映画を楽しんで一日の疲れを癒す。そんな映画館が無くなってしまうのは寂しい限りだ。現在、最終日までクロージング企画上映を開催中。オープンから20年の間、お客様から好評だった作品を上映している。


出典:映画館専門サイト「港町キネマ通り」
取材:2017年9月

語り手:大屋尚浩

平成12年から始めた映画館専門サイト「港町キネマ通り」にて全国の映画館を紹介している。自ら現地に赴き、取材から制作まで全て単独で行う傍ら、平行して日本映画専門サイト「日本映画劇場」も運営する。

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語り手:大屋尚浩

平成12年から始めた映画館専門サイト「港町キネマ通り」にて全国の映画館を紹介している。自ら現地に赴き、取材から制作まで全て単独で行う傍ら、平行して日本映画専門サイト「日本映画劇場」も運営する。

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