岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

theater somewhere

宮っこたちに慕われ続ける餃子の街の映画館

2018年05月02日

ヒカリ座(栃木県)

【住所】栃木県宇都宮市江野町7-13 プラザヒカリB1F・5F
【TEL】028-633-4445
【座席】スクリーン1:258席 スクリーン2:140席 スクリーン3:72席

 森田芳光監督のメジャー映画デビュー作『の・ようなもの』。若手落語家と女子高生と風俗嬢の3人が織りなす物語を、1980年代の空気感とセンスの良い語り口で描いた新しいタイプの日本映画だった。

高校時代に小さな映画館で観た時、その瑞々しい感覚に驚いた。森田監督の並外れた演出手腕もさることながら、主人公・志ん魚(しんとと)を演じた伊藤克信の棒読みのようにも聞こえる高低差がないイントネーションの栃木訛りが、この映画に柔らかな雰囲気を与えていた。
 付き合い始めた女子高生の家に、突然、上がることとなった志ん魚が「たまり漬を持って来なくてすみません」と母親に謝るところが笑える。この味噌の上澄み(たまり)で野菜を漬け込んだ漬物は県の名産品で、お土産の定番だ。他にも劇中で、宇都宮競輪や華厳の滝の話など、ことあるごとに口にする志ん魚が、まだ東京に染まりきっていない純朴さを残しているのが分かる。ちなみに宇都宮が町おこしとして餃子をフューチャーしたのは公開よりずっと後の平成になってから。

 そんな栃木の県庁所在地にあるJR線と東武線、ふたつの宇都宮駅は、男性の足でも徒歩25分掛かるほど離れているので、目的地を明確にして路線を選ばないと大変なことになる。昭和30年から宮っこ(…と、宮が付く街の住人をこう呼ぶらしい)たちに、映画を観るならココ!と、慕われ続けている街の映画館「ヒカリ座」があるのは、東武線に近いオリオン通り商店街。今では餃子の街として知名度が上がったが、当時は競輪と競馬で栄えており、駅周辺には繁華街や歓楽街が広がっていた。日本映画の斜陽期と囁かれた昭和45年に、単独館を取り壊して地下に東映の直営館(当時はビルの階上に映画館を作れない規制があったらしい)、5階と6階には大型キャバレーが入るプラザビルに建て替えられた。規制が緩和された平成8年にキャバレーを改装して現在の3スクリーン体制となる。
 地下の劇場は天井が高いロビーが特徴的だが、目を引くのは階段を降りたところに飾っているブロンズ像。これは美術品や骨董品を集めるのが趣味というオーナーのコレクションという。小山市にある同じ系列館「シネマロブレ5」にも数多く展示されており、さながらロビーは美術館のようだ。電車で30分ほどの距離にある二つの劇場で以前、滝田洋二郎監督作品の『おくりびと』を上映したことがあった。日本アカデミー賞を受賞するのでは?という可能性が濃厚となり、元々「シネマロブレ5」のみで上映していたのを「ヒカリ座」でも早朝の回を設けて時間差での上映を行った。勿論、当時はまだフィルムの時代。「ヒカリ座」の上映が終わり次第、待機していた運搬用のスタッフがフィルムを電車で運ぶという方法が取られた。一度は、電車が遅れてギリギリ10分前に滑り込んだ事もあったのも今は懐かしい思い出だ。

出典:映画館専門サイト「港町キネマ通り」
取材:2012年10月

語り手:大屋尚浩

平成12年から始めた映画館専門サイト「港町キネマ通り」にて全国の映画館を紹介している。自ら現地に赴き、取材から制作まで全て単独で行う傍ら、平行して日本映画専門サイト「日本映画劇場」も運営する。

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語り手:大屋尚浩

平成12年から始めた映画館専門サイト「港町キネマ通り」にて全国の映画館を紹介している。自ら現地に赴き、取材から制作まで全て単独で行う傍ら、平行して日本映画専門サイト「日本映画劇場」も運営する。

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