岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

theater somewhere

静岡駅の近く…由緒あるお寺が運営する映画館

2022年01月12日

静岡シネ・ギャラリー(静岡県)

【住所】静岡県静岡市葵区御幸町11-14 サールナートホール3F
【電話】054-250-0283
【座席】「スクリーン1・2」105席/「大ホール」200席

昔から静岡という街が好きだ。駿府城の城下町として栄えたこの街は緑が豊かで、どこからでも南アルプスが見える。雄大な自然を常に身近に感じられる…それがうらやましい。JR静岡駅北口から歩いてすぐ。交通量が激しい東海道から一歩中に入ると駅前の喧騒が嘘のような閑静な一画がある。そこに、石造りの外観が特徴的な「サールナートホール」という多目的ホールがある。サールナートとはお釈迦様が初めて仏教の教えを説かれたインドの地名で、外観はその遺跡をイメージしてデザインされている。現代の寺子屋というコンセプトで地域の人が気軽に集えるような場所として創設された「サールナートホール」は、静岡独自の文化を芽生えさせる場にしたいという理想の下、向かいにある宝泰寺の住職が平成7年に設立した施設だ。ここを生命を感ずる場となるよう、設計段階から音響には徹底的にこだわり、演奏者から音の反響には定評があるメインホールではコンサートと映画上映を不定期に開催されている。また、2階の研修室では大学の教授や専門家を招いて様々な角度から日本文化の講座が行われている。

元々、計画の段階から映画上映も視野に入れていたが、上映会も回を重ねて行く内に、もっと色々な映画をやってほしい…という多くの利用者から要望が高まり、8年後の平成15年に、新たに2つのスクリーンを有する常設のミニシアター「静岡シネ・ギャラリー」をオープンした。ここに来れば世界中の優れた映画から色々なことを教えてもらえる。まさに「映画の寺子屋」だ。格子の自動ドアから一歩、建物の中に入ると凛とした空気が漂う。待ち時間に賑わっていたロビーも上映が始まると一変して、ヒソヒソ声ですらコンクリートの壁面に響き渡るほど静寂に包まれる。BGMが流れていない館内は、まるでお寺の中にいるかのように落ち着ける。設計に関しては当初からこだわっており、受付から喫茶室にかけて緩やかな曲線を描いた壁は、無限の境地をイメージさせる。喫茶室と隣接する自動販売機の部屋へ抜ける出入り口はアーチになっており、角を丸く面取りするなど細かな仕事に感動を覚える。

エレベーターで3階に上がると、壁面にある大きなふたつの丸窓から自然光が取り込まれる「静岡シネ・ギャラリー」のロビーがある。仏教では丸窓は悟りの窓といわれており、そこからは向かいの宝泰寺と駿府城公園の彼方に連なる南アルプスの山々を見ることが出来る。元は会議室だったという2スクリーンの場内は意外なほど天井が高く、後方の3列は高い段差がつけられているので観賞しやすい。休憩時間にロビーで外を眺めながらお弁当を開いて過ごされるご婦人の姿を見かけた。映画が始まるまでの待ち時間にお弁当…実に素晴らしい時間の過ごし方だと思った。「映画を観なくても自由に使ってもらいたい」というロビーには無料で利用出来るお茶のサーバーがあるのが嬉しい。

設立当時は静岡にミニシアターが無く、一般の映画館では掛からない映画を観ることが出来る…という目新しさだけから来場されていたお客様も、今ではリクエストBOXに「こんな映画が観たい」と声が多数寄せられるようになった。お客様の好きなスタイルで生活の中に映画館を取り入れてもらいたい…という思いから始めたミニシアターが、ようやく街に浸透してきた証しでもある。だからこそお客様からの要望は出来る限り反映するようにしているという。寺院が運営しているからといって作品の選定を厳しくするのではなく、暴力シーンや性的な描写があったとしても上映する価値を重視して偏らない編成を心掛けているという。年間130~140本の作品を上映しており、年度ごとに募集される会員に毎月送られている会報誌には細かな作品紹介が掲載されている。テレビで宣伝している話題作ばかりではなく、まだまだ知られていない色々な映画をきめ細かく丁寧に伝えている会報誌を楽しみにしている会員も多い。

「静岡シネ・ギャラリー」で働くスタッフは、皆さん映画館で映画を観る事が好きな人たちばかりだから、映画を観終わったお客さんと歓談されている光景をよく目にする。取材に訪れた日も映画が終わって出て来たお客さんが「あのシーンが良かった」とか「会報誌で紹介していたから観たけど良かった」などと気軽に話しかけられていた。そんな光景を見て、映画館はお客さんから「ありがとう」の言葉を直接聞ける最前線なのだなぁ…と改めて感じた。


出典:映画館専門サイト「港町キネマ通り」
取材:2014年9月

静岡シネ・ギャラリーのホームページはこちら
http://www.cine-gallery.jp

語り手:大屋尚浩

平成12年から始めた映画館専門サイト「港町キネマ通り」にて全国の映画館を紹介している。自ら現地に赴き、取材から制作まで全て単独で行う傍ら、平行して日本映画専門サイト「日本映画劇場」も運営する。

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語り手:大屋尚浩

平成12年から始めた映画館専門サイト「港町キネマ通り」にて全国の映画館を紹介している。自ら現地に赴き、取材から制作まで全て単独で行う傍ら、平行して日本映画専門サイト「日本映画劇場」も運営する。

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