岐阜新聞 映画部

映画にまつわるエトセトラ

Rare film pickup

「認知症」を扱った日本映画名作選。「痴呆」から「認知症」へ

2022年04月15日

『ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえりお母さん~』予習

©2022「ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえり お母さん~」製作委員会

認知症は高齢者の5人に1人が発症する

「認知症」という言葉は、2004年12月厚生労働省の「『痴呆』に替わる用語に関する検討会」報告書により誕生した。

それまでは「ぼけ」「物忘れ」「痴呆」などと言われていたが、中でも「痴呆には侮蔑性があり実態を正確に表しておらず速やかに変更すべき」とされ、1:認知症、2:認知障害、3:もの忘れ症、4:記憶症、5:記憶障害、6:アルツハイマー(症)の6つの候補の中から、意見募集第2位の「認知症」が選ばれ翌年から変更された(ちなみに1位は「認知障害」)。

日本における65歳以上の認知症の人の数は約600万人(2020年現在)と推計され、5人に1人が認知症という計算になる。最も多いのが「アルツハイマー型認知症」で、脳神経が変性して脳の一部が萎縮していく過程でおきる認知症だ。(ここまでの記述は厚生労働省のホームページを参照した。)

日本で認知症(当時は痴呆)を初めて本格的に描いた小説は有吉佐和子の「恍惚の人」(1972年刊)。大ベストセラーとなり翌1973年豊田四郎監督・森繁久彌主演で映画化された。当時60歳の森繁が84歳のボケ老人を演じ、その迫真の演技は認知症の見えなかった部分を白日の下にさらした。しかしながらあまりのリアリティゆえに認知症を固定概念化してしまった感は否めない。1973年キネ旬ベストテン5位。

その後も認知症を正面から扱った日本映画の名作は続き、キネ旬ベストテン入りした作品を挙げても、元大学教授の父(千秋実)が起こすてんやわんやの大騒動を描いた『花いちもんめ』(伊藤俊也監督、1985年10位)。若年性アルツハイマーを題材にした渡辺謙主演『明日の記憶』(堤幸彦監督、2006年8位)、認知症の母との心温まる日常を描いた『ペコロスの母に会いに行く』(森崎東監督、2013年1位)がある。

信友直子監督が2018年に発表したのが、広島県呉市で暮らす両親を撮った『ぼけますから、よろしくお願いします。』。90代のお父さんが認知症が進む80代のお母さんを半分介護、でもまだ全面夫婦をしている姿をユーモアを交えて描き出す。

20万人の大ヒットに加え、文化庁主宰文化記録映画大賞、キネ旬文化映画3位、キネ旬ベストテン42位(選者の川本三郎さんは4位)と軒並みの高評価。私も予習で見直したが、認知症が進む87際の母との毎日同じやりとりもあり身につまされた。反省を促す映画だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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