岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

theater somewhere

この街に映画館を…という住民の声で復活した

2021年02月24日

シネマリオーネ古川(宮城県)

【住所】宮城県大崎市古川台町9-20 リオーネふるかわ2階
【電話】0229-24-3908
【座席】1010席

 仙台から東北新幹線で15分足らず…車窓からのどかな田園風景が見えてくると間もなく古川駅に到着する。宮城県北部にある農業が盛んなこの地で、かのブランド米ササニシキやひとめぼれが生まれた。朝早く駅前に到着するバスからたくさんの高校生が駅へと流れて行く。やがて通学時間のピークが過ぎると駅前も静寂を取り戻す。そんな駅前通りを西へ5分ほど歩くと、カルチャースクールや生鮮市場などが入る複合施設「リオーネふるかわ」がある。かつて、この場所は台町商店街として賑わっていたが、平成に入ると利用者が激減。空き店舗だらけとなった商店街の役員が、このままではいけないと立ち上がったのが始まりだ。

 商店街の人たちが出資をして街づくりを目的とした会社を立ち上げると、計画から8年間は再開発の研究会を続けながら、こつこつと資金を貯め続け、遂に平成14年に宮城県から再開発の認可を貰う事が出来た。そこで、地元の人たちに、この地域に必要なものをリサーチしたところ、新しい映画館が欲しいという声が多く上がった。昭和30年代には古川に4つの映画館があったが、やがてブームが去ると1館また1館と閉館して行き、平成15年にはとうとう最後まで残っていた映画館も閉館。しばらくは映画館の無い街となってしまった。だからこそ、昔を知る地元の人々は映画館という特別な日常空間の復活を求めたのだろう。

 とは言うものの映画館を作るといっても誰もが素人ばかり。大手シネコン会社や地元の映画館にも声を掛けても協力してくれるところは見つからなかった。そんな時、東急レクリエーションから協力してくれるという連絡が入り、番組編成からコンセッション、チケットボックスの運営方法までのノウハウを全て無償で提供してくれたのだ。というのも当時の東急レクリエーションの会長が古川近くの出身だったらしく「俺に任せておけ」という会長の一声でどんどん進み始めた。そして、古川市が合併して大崎市となった平成18年3月に待望のシネマコンプレックス「シネマリオーネ古川」がオープンした。

 オープンまでの間、「シネマリオーネ古川」だけのウリになるものを作り出せないか…と、色々な映画館を視察した結果、その中から生まれたのが独自の音響システム「T.M.C ナチュラルサウンド」だ。これは、ただ大音響で聴かせるのではなく、風の音だったり、木々のざわめきみたいな自然音を音質にこだわって忠実に再現した音響システムなのだ。また、お客様との触れ合いを大事にしており、チケットは対面の手売りにこだわる。シネコンのシステムに慣れていないご年輩の方には、お客様とのやり取りの中で良い席を勧めてくれる。経験のあるスタッフさんともなると相手を見てお席を勧められるというからすごい。

 オープンから3年が経ち、創意工夫の中から古川らしいシネコンを確立し始めた矢先、宮城北部地震が発生する。震度6の揺れは一部シアターの天井材を崩落させて、修理に3週間を要した。更に2年後には東北全域を襲った東日本大震災によって場内全ての天井が落ちてロビーもメチャクチャな状態になってしまったという。やがて電気が通り、電話が開通した4月の終わり頃、劇場に一本の電話が鳴り響いた。それはお客様からの電話で、「映画館はどうするの?」といった問い合わせが何本もあったのだ。こうした再開を待ち望む声に背中を押され、夏休み興行に間に合わせる形で7月上旬に再オープンを果たした。それでもしばらくは、震災以前の状態に戻る事はなく、しばらく厳しい時期が続いたが、『アナと雪の女王』の公開を機に潮目が変わったという。そこから次第に子供たちが友だちと連れ立って自転車で気軽に来場されたり、年輩の方も路線バスを利用して隣町から観に来られるようになった。隣町の黒川郡大和町が舞台のご当地映画『殿、利息でござる!』は、年輩の方だけではなく多くの若者も来場して、実写では一番の動員数を記録する事となる。映画館が無かった街に映画館が復活した事で、ご夫婦で映画を観た帰りに食事をしたり買い物をしたり…そんな都会と変わらない生活だって出来るようになった。そして今、お客様からは「この場所から映画館の灯を消さないで欲しい」と声も届いている。


出典:映画館専門サイト「港町キネマ通り」
取材:2017年8月

シネマリオーネ古川のホームページはこちら
http://www.cinema-rione.jp/

語り手:大屋尚浩

平成12年から始めた映画館専門サイト「港町キネマ通り」にて全国の映画館を紹介している。自ら現地に赴き、取材から制作まで全て単独で行う傍ら、平行して日本映画専門サイト「日本映画劇場」も運営する。

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語り手:大屋尚浩

平成12年から始めた映画館専門サイト「港町キネマ通り」にて全国の映画館を紹介している。自ら現地に赴き、取材から制作まで全て単独で行う傍ら、平行して日本映画専門サイト「日本映画劇場」も運営する。

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