岐阜新聞 映画部

映画にまつわるエトセトラ

Rare film pickup

私の好きなものが全て詰まっている大林作品

2020年04月28日

大林宣彦監督との旅路

大林監督との新しい出会いを求めて、旅を続けていくことにする

 とうとう大林宣彦監督が亡くなった。ガンで余命宣告されてから3年以上、覚悟していたこととはいえ、ショックである。しかし、最後まで現役を貫き、映画を作り続けたその執念には恐れ入る。

 大林宣彦作品との出会いは中学生の頃にDVDで観た『HOUSE ハウス』であった。めくるめくその映像世界に圧倒されながらも、実はこの時はあまりハマらなかった。その後、『転校生』、『時をかける少女』、『ねらわれた学園』、『天国にいちばん近い島』、『ふりむけば愛』と鑑賞し、1作ごとに繰り出されるテクニカルな映像と瑞々しい描写ですっかりファンになった。ほかの作品も観なければと思いつつ、ついつい60、70年代の映画を優先してしまっていた。そう、ファン失格である。

 そして大学生のとき、大林宣彦の特集上映が行なわれたのだが、この時に観た作品がまぁ、凄かった。『青春デンデケデケデケ』、『廃市』、『ふたり』、『あした』…。この特集では外され、DVDで観た『さびしんぼう』。私の大林映画ベストに挙げる作品群は、全てこの時に出会ったと言って良い。しかも、その多くをスクリーンで初体験できたのである。もっと早く観ておけばよかったという後悔と、観ていなかったからこそ初めての出会いがスクリーンになったのだという嬉しさで感情は揺れていた。私はここで、大林宣彦に決定的に惚れた。大林作品には美少女の可愛らしさ、切なさ、ノスタルジー、そしてテクニカルな映像と私の好きなものが全て詰まっていることを確信したからだ。

 晩年の反戦映画も忘れてはならない。年齢を重ねるごとに『HOUSE ハウス』のような作風へと原点回帰していった。年齢と作風が反比例していく映画監督はあまり例がない。特に年齢を重ねるとどこか落ち着いてくるものだが、大林宣彦は完全に逆行していた。落ち着きがなくなったのだ。長尺ながらエキセントリックな映像は極まり、極彩色の画づくりや瑞々しさで映画は若さに満ち溢れていた。それだけに大林宣彦の新作が次を最後に観られなくなるのはつらい。新作であり遺作『海辺の映画館 キネマの玉手箱』、心して観なければ。さて、どんな若々しい表現が飛び出すのだろうか。

 しかし、私はまだ大林宣彦を知らないと言って良い。なぜなら、大林監督は1作ごとに異なる映像表現を追求しているからだ。ということは、大林宣彦を語るには全ての監督作品を観なければならないのである。いつの日か、全作品を鑑賞したときに改めて大林宣彦について語りたいと思う。それまでは、監督との新しい出会いを求めて、旅を続けていくことにする。

 今までありがとうございました。そして、これからもよろしくお願いします。大林宣彦監督。

語り手:天野 雄喜

中学2年の冬、昔のB級映画を観たことがきっかけで日本映画の虜となり、現在では24時間映画のことを考えながら過ごしています。今も日本映画鑑賞が主ですが外国映画も多少は鑑賞しています。

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語り手:天野 雄喜

中学2年の冬、昔のB級映画を観たことがきっかけで日本映画の虜となり、現在では24時間映画のことを考えながら過ごしています。今も日本映画鑑賞が主ですが外国映画も多少は鑑賞しています。

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