岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

theater somewhere

大隅半島にただひとつ…皆の思いで復活した映画館

2018年01月11日

リナシアター(鹿児島県)

【住所】鹿児島県鹿屋市大手町1番1号
【TEL】0994-35-1001
【座席】68席

 ちょうど1年前、鹿児島市内でレンタカーを借りて桜島フェリーで大隅半島へ渡る。所要時間はわずか15分ほど。料金は1000円前後、車じゃなければ160円と安い。

 市民にとってはバスのような交通機関なのだろう。フェリー船内で行列が出来るほど美味しいと評判のうどんを大急ぎで食べる。なるほど…少し甘めの出汁がクセになりそうだ。デッキから見える桜島と紺碧の鹿児島湾が素晴らしい。フェリーを下りて、日帰り温泉が立ち並ぶ溶岩道路を1時間ほど走る。そこから少し内陸に入ったところに、今回の目的地・鹿屋市がある。
 県内3番目の人口を有する街だけあって、中心部に近づくと人通りも多くなってくる。かつてシャッター通りと化して空洞化が進んでいたこの界隈を、10年ほど前に官民一体となって市街地再開発事業が行われた。それが、商業施設や様々なコミュニティ施設が入る「リナシティかのや」だ。その中に街(というより半島)に唯一の映画館「リナシアター」がある。オープンまでの道のりは難題続きで、オープン日だけは決まっていたが、映画館をどうやって運営すれば良いのか?なんて誰も知らなかった。かつて、街には4つの映画館があったものの、最後の映画館が閉ってからもう20年以上も経っていた。そこでスタッフは鹿児島市内の映画館に相談を持ちかけたところ「鹿屋にまた映画館ができるなら…」と全面的に協力してくれたという。

 「リナシアター」の広々としたロビーはオープンスペースとなっており、平日の昼間はお年寄りのグループが集まって談笑したり、学生が勉強や読書をしたり…という姿がよく見られる。また、晴れた日は市街を見渡せる抜けの良い屋外テラスでお弁当を広げて、上映までの待ち時間をゆっくりと過ごせるのがいい。受付カウンターではドリンクやお菓子が販売されており、場内に持ち込みが可能だ。こうした公共施設で場内飲食とは珍しいが、市民から求められたのは、あくまでも普通の映画館であること。だったら映画を観ながらお菓子を食べられなきゃ意味がないと…こうした小さなところにもこだわった。
 しばらく、映画館の無い街だったため、最初は戸惑っていた市民も少しずつ足を運ぶようになり、日頃、単館系の映画を観ないようなお年寄りまで「せっかくだから…」と通うようになってくれた。ご当地映画『永遠の0』には子どもからお年寄りまで幅広い年代の人たちが観に来てくれた。歴代動員数のトップ3には、井上真央主演の青春ラブコメ『花より男子 ファイナル』がランキングされている。この時ばかりは、小学生の女の子から年輩の女性まで、市内の女性が全員来たのではないか?と思うほどの賑わいを見せた。それまでは、観たい映画があったら、バスとフェリーを乗り継いで鹿児島市内まで行くしかなかった鹿屋市の中高生にとって、映画館がもっと身近な存在になったのだ。

出典:映画館専門サイト「港町キネマ通り」
取材:2017年1月

語り手:大屋尚浩

平成12年から始めた映画館専門サイト「港町キネマ通り」にて全国の映画館を紹介している。自ら現地に赴き、取材から制作まで全て単独で行う傍ら、平行して日本映画専門サイト「日本映画劇場」も運営する。

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語り手:大屋尚浩

平成12年から始めた映画館専門サイト「港町キネマ通り」にて全国の映画館を紹介している。自ら現地に赴き、取材から制作まで全て単独で行う傍ら、平行して日本映画専門サイト「日本映画劇場」も運営する。

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