岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

theater somewhere

映画発祥の地で、映画を愛する常連さんに支えられ…

2018年02月07日

Cinema KOBE(兵庫県)

【住所】兵庫県神戸市兵庫区新開地6-2-20 リフレ神戸101
【TEL】078-531-6607
【座席】スクリーン1:121席 スクリーン2:79席

新開地は、神戸市を東西に分断していた湊川を明治34年に埋め立ててできた街だ。西からは山陽電車、東からは阪神電車、阪急電車など、5本の路線が集中する交通の便から、関西屈指の繁華街が形成される。

明治42年には国内初の活動写真館が設立(映画発祥の地と言われている)されたのを機に、やがて芝居小屋や映画館が軒を連ねる大興行街に発展。昭和30年代まで「西の新開地、東の浅草」と並び称されるほどの賑わいを見せる。
 新開地のすぐそばにある西柳原で育った映画評論家の故・淀川長治氏(お母様は活動写真を鑑賞中に産気づいたというから生れながらの映画人だ)は少年時代、新開地の映画館は人間教育を受けた学校だったと、自身の著書で語っている。高度経済成長期を過ぎた昭和40年代から、次第に日雇い労働者のドヤ街という色が濃くなったことと、隣接する福原に遊郭があったことから、女性や子供から敬遠された時期がしばらく続く。そんな新開地のど真ん中…昭和32年にオープンした二番館「新劇会館」を前身とする名画座と成人映画館…2つの顔を持つ「cinema KOBE」がある。

 阪神淡路大震災で甚大な被害を受けた新開地も、復興によって新しい街に生まれ変わり、下町の飲み屋に集まる粋なオッチャンたちと、そうした風情を楽しみながらピロシキを買い食いする若い人たちが集まる新しい空気が吹き始めた。この日、湊川公園にある名画座「パルシネマしんこうえん」に寄って、昔ながらの定食屋と新しいカフェが共存している本通りをぶらぶら「cinema KOBE」まで歩いてみた。2本立て名画座のハシゴだ。少し早めの夕飯を映画館のスタッフさんから教えてもらった老舗洋食屋「ゆうき」で、オススメのビフカツを食べた。ビフカツが得意でない僕ですら、あまりの美味しさに2日も連チャンで通ったほどだ。これで1300円だからランチに行列ができるのは分かる。
 お店を出る頃には辺りもすっかり薄暗くなっていた。通りを照らすガラス張りのロビーから洩れる灯りに誘われて「cinema KOBE」に入る。映画が始まるまで、オーナーがコレクションしているヴィンテージものの雑誌が陳列された休憩室で待たせてもらう。おかげで楽しい時間が過ごせた。場内の壁面を注意して見ると照明でできた影がフィルムになっていたり…映画への愛情を感じられる演出が随所に施されている。だから、ここに来るお馴染みさんが「昔から映画を新開地で観ていたから、ここに来るとホッとする」と口々に言われるのもうなづける。中には忙しいスタッフを気遣って、受付が手薄の時には代わりにお客さんを案内をしてくれたり、帰り際何も言わずに菓子パンや果物を置いていってくれる方もいるそうだ。これが、この街の良いところであり、こうした人たちに映画館は支えられている。

出典:映画館専門サイト「港町キネマ通り」
取材:2013年8月

語り手:大屋尚浩

平成12年から始めた映画館専門サイト「港町キネマ通り」にて全国の映画館を紹介している。自ら現地に赴き、取材から制作まで全て単独で行う傍ら、平行して日本映画専門サイト「日本映画劇場」も運営する。

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語り手:大屋尚浩

平成12年から始めた映画館専門サイト「港町キネマ通り」にて全国の映画館を紹介している。自ら現地に赴き、取材から制作まで全て単独で行う傍ら、平行して日本映画専門サイト「日本映画劇場」も運営する。

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