岐阜新聞 映画部

映画にまつわるエトセトラ

Rare film pickup

今のアメリカ映画の隆盛を支える外国人監督

2018年04月09日

第90回アカデミー賞で振り返る

『シェイプ・オブ・ウォーター』『スリー・ビルボード』

 アカデミー賞の作品賞と監督賞を受賞した『シェイプ・オブ・ウォーター』のギレルモ・デル・トロ監督は、「映画は国境線を消し去ってくれる」という趣旨のスピーチをした。それこそが映画の素晴らしさであり、トランプ政権下のアメリカで映画産業に携わる人々の思いであろう。
 近年、アカデミー賞の作品賞及び監督賞受賞者には外国人が多い。2016年『レヴェナント 蘇えりし者』と2015年の『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』で受賞したアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督と、2014年の『ゼロ・グラビティ』のアルフォンソ・キュアロン監督は、デル・トロ監督と同じメキシコ人。他にも台湾のアン・リー、イギリスのダニー・ボイル、サム・メンデスら、ニュージーランドのピーター・ジャクソン、カナダのジェームズ・キャメロン。アメリカ映画の隆盛は、世界から集う才能ある映画人によるところ大である。
 『シェイプ・オブ・ウォーター』は、声の出せない女性と半魚人の恋を描いたB級的なシチュエーションから生まれた、思いもよらぬ超A級のファンタジー映画の傑作だ。デル・トロ監督は、米ソ冷戦下の1960年代を舞台に、障害者や社会から疎外された者、異形の者に温かい眼差しを注ぎ、逆にそれらを差別し排除しようとする者を断罪するといった社会性に、往年のミュージカル映画やモンスター映画への映画愛を共存させ、さらに、スパイ映画や脱出劇の味付けも加えて、最終的には究極のラブ・ストーリーに昇華させるという離れ業を成し遂げた。
 2部門で受賞した『スリー・ビルボード』のマーティン・マクドナー監督はイギリス人である。人間の複雑さをこれほど見事に描いた群像劇にはめったにお目にかかれない。これまで見てきた人間ドラマの大半がステレオタイプに思えてくるほどだ。登場人物は皆多面的な顔を持っていて、その場面場面で様々な顔を覗かせる。人間本来の複雑な魅力が予想のつかない展開と相まって、作品を一時も目の離せないエキサイティングなものにしている。そして、観終わったあとには、そんな愚かで身勝手で、それでいてどこかで正しく生きたいと思っている人間たちが愛おしくなる傑作だ。
 イギリス人監督クリストファー・ノーランの『ダンケルク』(3部門受賞)とカナダ人監督ドゥ二・ヴィルヌーヴ監督の『ブレードランナー2049』(2部門受賞)も画期的な傑作だった。

語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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