岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

theater somewhere

雄大な山々に囲まれた
スモールタウンの映画館

2017年12月21日

飯田トキワ劇場(長野県)

【住所】長野県飯田市銀座5-2
【TEL】0265-22-0742
【座席】1号館:140席 2号館:90席 3号館:40席

 豊かな自然に恵まれた南信州に位置する飯田市に戦前の芝居小屋から続く映画館「飯田トキワ劇場」がある。南北を中央アルプスと南アルプスに挟まれるこの街は、お世辞にも交通の便が良いとは言えない。
 名古屋からも松本からも周囲を山に囲まれた飯田に列車で行くのはかなりの遠回りで、高速バスが主な交通手段だ。今回は春の信州路をゆっくりと堪能出来る飯田線での移動を選ぶ。車窓からは、右手には今にも襲いかかってきそうな1000メートル級の山々、左手には水を引いたばかりの田んぼに青々とした稲が風に揺られているのが見える。

 飯田駅は街の中でも小高い場所にあることから「丘の上」という愛称で呼ばれており、駅に近づくと車窓から街の様子が一望出来る。碁盤の目に整理された街並は、まるで1950年代のハリウッド映画(例えば『エデンの東』や『ピクニック』のような)に出てくるスモールタウンを彷彿とさせる。だからだろうか、映画のロケ地によく使われており、近年では土屋太鳳主演の青春映画『orange オレンジ 』の撮影が市内の高校による全面協力の下で行われている。南信州の柔らかな陽射しの中で繰り広げられる少年少女たちのキラキラした心情を軽やかに謳い上げる見事な一遍に仕上げていた。

 「飯田トキワ劇場」は、戦前の「大松座」という芝居小屋から続く歴史ある映画館だ。創業時の建物は昭和22年に発生した飯田の大火によって全焼してしまうが、翌年には早くも木造二階建て客席数1000席(県内で5本の指に入る大劇場だ)の映画館を設立したというから驚く。しばらくは芝居もできる舞台があって、大映と新東宝映画と芝居を交互にやっていたが、昭和25年に日本映画も最盛期を迎えると映画の専門館となる。当時は、映写技師が3人常駐して、劇場前の自転車置き場には自転車番専門の人まで雇うほど賑わっていたそうだ。
 現在のビルとなったのは昭和62年から。東宝洋画系を中心とした番組構成で、休日には若者の姿も多く見られる。山に囲まれて交通の便が悪いという飯田市の立地は、外から来づらいと同様に外に出づらいということでもある。だから、近隣の影響を受けることは少なくて、地元の人たちは、観たい映画ならば、数日遅れてでも地元の映画館で観る習慣が根強く残っているという。また、この辺りの人たちは、農業に従事されている方が多く、繁忙期に当たる5月の晴れた日は田んぼに出てしまうため、雨が降ると客足が伸びて、晴れると客足が鈍る…都会と逆の動員現象を見せる。まさに飯田ならではの映画館あるあるだ。実際、前日は雨だったので、平日でも入りは良かったというのだから、地域によって映画館を取り巻く環境が全然違うのが面白い。

出典:映画館専門サイト「港町キネマ通り」
取材:2017年5月

語り手:大屋尚浩

平成12年から始めた映画館専門サイト「港町キネマ通り」にて全国の映画館を紹介している。自ら現地に赴き、取材から制作まで全て単独で行う傍ら、平行して日本映画専門サイト「日本映画劇場」も運営する。

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語り手:大屋尚浩

平成12年から始めた映画館専門サイト「港町キネマ通り」にて全国の映画館を紹介している。自ら現地に赴き、取材から制作まで全て単独で行う傍ら、平行して日本映画専門サイト「日本映画劇場」も運営する。

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