岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

theater somewhere

歌舞伎町で骨太な大作映画を観るならココ

2021年12月08日

【思い出の映画館】新宿プラザ劇場(東京都)

【住所】東京都新宿区歌舞伎町1-19-2
【座席】1044席
※2008年11月7日をもちまして閉館いたしました

夜はクラブや飲食店のネオンが煌々と瞬き多くのサラリーマンや学生で賑わいを見せる東京随一の歓楽街である歌舞伎町のど真ん中には、大手興行会社が運営する映画館が軒を連ねる映画街があった。西武新宿線新宿駅からすぐ。中央には噴水と藤棚のある広場があって、昭和の人気刑事ドラマ『太陽にほえろ!』では、毎回ロケ撮影が行われていた場所だ。はたして何人の犯人がこの広場で捕まってきた事だろう。その広場には四方を囲むように大小16館の映画館と、最大2750名を収容出来た演歌の殿堂「新宿コマ劇場」があった。そんな昼の顔と夜の顔を持つ歓楽街の中心に位置する広場にあった昔から変わらない映画街全体を「新宿シネシティ」という名称にして街そのものを大きなシネコンとしてしまった。

その入口に堂々とそびえ建っていたのが、東宝の直営館である「新宿プラザ劇場」だ。1000席以上の客席を持つ大劇場は、歌舞伎町のシンボルとなっており、夜になると華やかにライトアップされる巨大な看板に思わず足を止めてしまう。昭和44年10月にセルジオ・レオーネ監督作品『ウエスタン』でオープンして以来、西部劇からスパイアクション、SF映画など、骨太の男っぽい東宝洋画系アクション大作を中心に数多くの名作を送り続けて来た。

やはり歌舞伎町という場所柄だろうか?「新宿プラザ」では、硬派な骨太の映画に人気が集中しており、興行収入では『ターミネーター2』、観客動員数としては『ゴッドファーザー』が1位を記録(何と『タイタニック』は1位ではないのだ)している。過去の上映作品を見ても『バック・トゥー・ザ・フューチャー』シリーズや『インディー・ジョーンズ』シリーズなど、どれもが大作と呼ぶに応わしい作品が名を連ねている。特に『スターウォーズ』シリーズは、閉館までの間、エピソード4から新シリーズのエピソード3まで全作を上映した国内唯一の映画館でもあった。

場内は、70mmとD-150の上映システムを完備しており、迫力のある映像を楽しむ事が出来た。スクリーンは左右の歪みを最小限に抑えるため湾曲しているのが特徴だ。縦に長い緩やかなスタジアム式に客席が配置されており、高い天井の持つ開放的な雰囲気は超大作を観るには理想的な空間だった。巨大なスクリーンを視界いっぱいで楽しみたい私のお気に入りは前列から10列目の中央。映画を全景として楽しみたい人は中央より後方の座席で空間の広さを丸ごと楽しむ。また、音響に関しては最新設備を導入していたので、音の反響が素晴しく、特にシンフォニックな音楽などの再現性に優れている点はファンの間でも定評があった。

チケット窓口のあるエントランスから漂う大劇場の風格はロビーにも繋がっており、赤いカーペットを敷き詰めた広いロビーには老舗劇場の気品が溢れていた。中央の階段を上がってくと座席の後方部へ入る事が出来、そこにも広いロビーが存在していた。客層としても若いカップルから年輩まで幅広く、平日の夜はOLやサラリーマンが会社帰りに訪れていた。勿論、東宝の新宿エリアの要となる直営館だけに、『新宿プラザ』の固定ファンも多く、超大作を観るならココ!と決めて来られるリピーターからは絶大なる支持を得られていた。

大画面で迫力ある映画を体いっぱいで体感する…そんなファンを長年魅了し続けてきた大劇場も歌舞伎町エリアの再開発に伴い閉館。最後の7日間はラストショーイベントを開催して多くのファンが別れを惜しんだ。『ベン・ハー』を皮切りに『ゴッドファーザー』全シリーズ、最終日に『タイタニック』が上映され、39年の歴史に幕を下ろした。


出典:映画館専門サイト「港町キネマ通り」
取材:2002年7月

語り手:大屋尚浩

平成12年から始めた映画館専門サイト「港町キネマ通り」にて全国の映画館を紹介している。自ら現地に赴き、取材から制作まで全て単独で行う傍ら、平行して日本映画専門サイト「日本映画劇場」も運営する。

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語り手:大屋尚浩

平成12年から始めた映画館専門サイト「港町キネマ通り」にて全国の映画館を紹介している。自ら現地に赴き、取材から制作まで全て単独で行う傍ら、平行して日本映画専門サイト「日本映画劇場」も運営する。

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