岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

theater somewhere

日本最古の映画雑誌社が運営する映画館で映画と本を満喫する。

2019年12月11日

キネマ旬報シアター(千葉県)

【住所】千葉県柏市末広町1-1 柏高島屋ステーションモールS館隣り
【電話】04-7141-7238
【座席】スクリーン1:160席 スクリーン2:148席 スクリーン3:136席

 映画少年だった僕は中学・高校生時代、いかに一本でも多くの映画を観る事ができるか?いつも頭の中はそのシミュレーションが繰り返されていた。そしてもう一つ…映画雑誌全盛だった当時、その雑誌を購入する事も大切だった。決して高校生にとってはバカにできない500円という高価な価格がついた雑誌「キネマ旬報」を学校帰りの本屋で立ち読みしてギリギリまで買うのを迷った事を今でも鮮明に覚えている。お正月にはお年玉を握りしめて古本屋でまとめ買いしたものだから、学生時代の「キネマ旬報」の印象はカビ臭い古本の香りだった。

 そんな大正8年7月に創刊された「キネマ旬報」の発行元で日本最古の映画雑誌社である「キネマ旬報社」が映画館を作った。何と言っても、あのキネ旬がプロデュースする映画館なのだから、何かすごいプログラムをやってくれるのでは…とマニアックな期待が膨らむ嬉しいニュースだった。場所は都心から30分ほど、常磐線と東武野田線が乗り入れるターミナル柏駅だ。以前は「柏ステーションシアター」という街の小さなロードショー館だったが、2013年2月2日にキネ旬ベスト・テン受賞20作品興行(何と魅力的な興行だろう!)をこけら落としに「キネマ旬報シアター」(当時の館名は「TKPシアター柏」)でオープン。

 通りに面した壁面は全てガラス張りになっており、夕方になると館内から漏れてくる灯りが幻想的な雰囲気を醸し出している。 少し早めに受付でお目当てのチケットを購入して階段を上がると、2階にあるキネマ旬報のバックナンバーが揃っている「KINEJUN 図書館」で開場までの待ち時間を過ごす。あぁ…何という至福のひとときだろうか。勿論、キネ旬以外にも映画関連書籍が充実しており、休憩時間に読み切れない場合でもキネマ旬報社が発刊しているマークの付いた書籍は「キネ旬友の会」の会員であれば貸し出しもOKというのが嬉しい。観賞後は半地下にある「KINE Cafe」でパンフレットを眺めながらしばし余韻に浸るのもオススメだ。

 ロビーは全て開放されているので、映画を観ない方でも自由に利用できるのが嬉しい。ブラっと立ち寄ってゆっくり本を読んで、お腹が空いたらカフェで軽食を済ませるのも良し。気になる作品があったら映画の梯子をして、休憩時間もどっぷり映画に浸るを有意義に過ごしてもらおうというのがコンセプトの映画館なので、ココに来れば映画漬けの一日を過ごせる…何とも羨ましい場所なのだ。

 それでも、キネマ旬報社の長い歴史で映画館を持つというのは初めての試み…オープンに至るまで内外の関係者から応援と反対意見が同時に湧き上がったそうだ。全国の映画館が閉館していく中、敢えて映画館をオープンするなんて、確かに挑戦というよりも冒険と言った方が正しいかも知れない。しかし、シネコン中心の映画環境になっている地方都市で、敢えて一石を投じた意図は充分理解できる。まさに、今まで街なかで映画を支えてきた小さな映画館の跡地で、多様性のある映画館をオープンした意義は大きい。3スクリーンの強みを活かして、新作・準新作を上映するミニシアターの役割からキネマ旬報が厳選した旧作を上映する名画座と幅広い上映作品に、目の肥えたシネフィルだけではなく、地元の映画ファンまで誰もが楽しめる映画館として多くのリピーターを増やしている。


出典:映画館専門サイト「港町キネマ通り」
取材:2014年7月

キネマ旬報シアターのホームページはこちら
http://www.kinenote.com/main/kinejun_theater/home/

語り手:大屋尚浩

平成12年から始めた映画館専門サイト「港町キネマ通り」にて全国の映画館を紹介している。自ら現地に赴き、取材から制作まで全て単独で行う傍ら、平行して日本映画専門サイト「日本映画劇場」も運営する。

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語り手:大屋尚浩

平成12年から始めた映画館専門サイト「港町キネマ通り」にて全国の映画館を紹介している。自ら現地に赴き、取材から制作まで全て単独で行う傍ら、平行して日本映画専門サイト「日本映画劇場」も運営する。

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