岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

theater somewhere

伊勢佐木あたりで、一本の映画とコーヒーと…

2018年01月31日

横浜シネマリン(神奈川県)

【住所】神奈川県横浜市中区長者町6-95
【TEL】045-341-3180
【座席】102席

 横浜・伊勢佐木町のミニシアター「横浜シネマリン」にて開催された倍賞千恵子特集で、昭和38年公開の松竹映画『下町の太陽』を観る。

そういえば、ここが「イセザキシネマ座」という館名だった昭和39年(何と!経営者は商店街のとんかつ屋さんなのだ)は、松竹のチェーン劇場だったことを思い出す。こうした昔の名作を掛けてくれた時は、観終わったら必ず、隣接する喫茶店「あづま」で、コーヒーとミートソーススパゲティを食べて帰る。この店の良いところは昔どこにでもあった「町の喫茶店」そのままで、競馬新聞片手に桜木町の場外帰りのオッチャンたちが立ち寄る気軽さにある。

 「横浜シネマリン」は、青江三奈のヒット曲「伊勢佐木町ブルース」で知られる港町・横浜にあるイセザキモールから一本裏道に入ったところにある。夕暮れ時、ポツリポツリ…とあかりが灯るこの辺りは、昭和の空気感が今も漂う再開発とは無縁の地域だ。伊勢佐木町といえば黒澤明監督の名作『天国と地獄』だ。三船敏郎演じる靴メーカー重役の息子(後で運転手の息子と判明する)を誘拐した犯人役の山崎努を尾行する刑事たちの息詰まる攻防が繰り広げられたのが、まさに伊勢佐木町から黄金町にかけたこの界隈だった。この映画の舞台となる昭和30年代は、高度経済成長期の渦中にあり、戦後。貧富の格差が色濃く現れた時代だ。横浜市内を見渡せる浅間台に建つ重役の屋敷を見上げる犯人の表情に、映画が単なる勧善懲悪と割り切れない暗部を描いているのが分かる。
 伊勢佐木町から黄金町には大小の映画館が軒を連ねる映画街があった。県下最大の規模を誇っていたイセザキモールには、横浜港に水揚げされた国内外のありとあらゆる日用品(中には横流しされた物も)が集まり、様々な人種の坩堝(るつぼ)と化していた。中村高寛監督のドキュメンタリー映画『ヨコハマメリー』で紹介された、メリーさんのような米兵相手の娼婦が、通りに立って客を引いていたのもこの時代だ。「横浜シネマリン」が吉本興行の運営する「横浜花月劇場」という館名で、40円均一の大映専門館としてオープンしたのは、まさにその時代のさなか…昭和30年のことである。
 今から3年ほど前に一度は閉館した「横浜シネマリン」だが、地元の映画サークルで活動していた現支配人によって、デジタルとフィルムのどちらも上映できるミニシアターとして復活。以前はウナギの寝床と呼ばれた縦長の場内は、前4列を撤去してスクリーンを手前に出すことで、デジタル映像のコントラストが理想的に再現できるようにした。また、天井の空調ダクトを取り払いスクリーンを大きくして、壁に張り巡らしたグラスウールが音の反響を抑えて理想的なサウンドを実現している。

出典:映画館専門サイト「港町キネマ通り」
取材:2015年4月

語り手:大屋尚浩

平成12年から始めた映画館専門サイト「港町キネマ通り」にて全国の映画館を紹介している。自ら現地に赴き、取材から制作まで全て単独で行う傍ら、平行して日本映画専門サイト「日本映画劇場」も運営する。

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語り手:大屋尚浩

平成12年から始めた映画館専門サイト「港町キネマ通り」にて全国の映画館を紹介している。自ら現地に赴き、取材から制作まで全て単独で行う傍ら、平行して日本映画専門サイト「日本映画劇場」も運営する。

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