岐阜新聞 映画部

映画にまつわるエトセトラ

Rare film pickup

汚くてエグいのにポップでオシャレを感じる不思議映画体験

2023年11月01日

須藤蓮セレクト 35ミリフィルム上映第2弾『トレインスポッティング』

©Channel Four Television Corporation MCMXCV

久しぶりに昔観た映画に再会する。

記憶の片隅にしかなかった "思い" が一気に吹き出し溢れる。こんな体験をされた事はおありだろうか?

もっと、分かりやすい事で言えば "音楽" ーこちらの方が、耳から直接、映画よりも気軽に再会の機会が訪れる。

センチメンタルに限定はできないが、映画や音楽は時にタイムマシーンのようなや役割を果たしたりする。

『トレインスポッティング』が日本で公開されたのは1996年の秋。本国イギリスでは年初に公開されたヒット、アメリカでも話題になっていたから、日本公開時には事前情報がかなりあったと記憶している。そのひとつがビジュアル先行のお洒落な流行感覚だったのだろう。

英国・スコットランドのエディンバラが舞台。ヘロイン中毒のレントン(ユアン・マクレガー)は静脈注射で一気に昇天する。

その取巻きもややこしい奴らが多い。

やたらと映画の講釈をまくし立てるヘロイン中毒の "シック・ボーイ"。『007 シリーズ』の出来不出来について語り、ボンド役のショーン・コネリーの役者論にまで話は及ぶ。

同じくヘロイン中毒のスパッドは取り立てて個性はないが "いい奴"。

麻薬には手を出さない御仁もいて、わざわざ有害な毒を体には入れないと言いつつ、アルコール中毒ですぐにキレる暴力的なベグビー。

仲間にあってはいたって "普通" のトミーには彼女もいる。

序盤からエグい映像が続き、執拗にこの世捨人のような若者の生態を暴く。臭いたつ醜悪な映像の連続、思わず目を背けたくなる瞬間もやってくる。

原作は舞台エディンバラ出身のアーヴィン・ウォルシュで、彼は1958年生まれだから、90年代の世代とは年齢のズレがある。

監督は本作が長編第2作となるダニー・ボイルで、原作者とほぼ同世代(56年生まれ)。

見た知った経験談という側面が多少はあるとしても、引いた視線を感じるのはこの時差があるからかも知れない。

イギー・ポップ、ブライアン・イーノ、スリーパー、ルー・リードなど、ニューウェーブ系のロック音楽に呼応する斬新な映像感覚は衝撃だった。

と言っても、実は私も96年当時は、若者ではなくズレた世代に達していたから、この映画鑑賞体験は辛かった…と振り返る。

久しぶりのロイヤル劇場での35ミリフィルム上映体験。相変わらず汚いけど、決して古びていない映画。

そんなに大袈裟な思いはないけれど、あの頃を思い出す。あの時何をしていただろうか…と。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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