岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

theater somewhere

伊勢神宮のお膝元で芝居小屋から続く映画館

2018年01月17日

進富座(三重県)

【住所】三重県伊勢市曽祢2-8-27
【TEL】0596-28-2875
【座席】本館:108席 別館:48席

 季節を問わず多くの参拝客が乗降する伊勢神宮の最寄りの伊勢市駅。伊勢神宮の正式な参拝方法は、まず外宮を参拝して、それから本殿となる内宮を参拝する。

だから、殆どの乗客は駅から真っすぐ延びる参道を外宮に向かって歩いて行く。そんな人の流れとは逆方向の宮町方面に歩くこと10分ほど。しんみち商店街という味わい深いアーケードを抜けたところに、芝居小屋から始まった歴史ある映画館「進富座」がある。創業者は「東海道中膝栗毛」にも登場する芝居小屋「長盛座」の支配人を務めた人物。元々、伊勢の古市は芝居が盛んだった地域で「芸の始めは古市。古市で当たれば、上方でも江戸に持って行っても大丈夫」とさえ言われていた。
 「新富座(後の進富座)」が、現在の場所で歌舞伎の興行を始めたのは昭和2年のこと。戦時中に伊勢大空襲で焼失するも、住民の協力で建築物資をかき集めて、昭和23年に完成した「仮小屋」で興行を再開した。当時、人気を博していた東西の役者を招き、二代目中村鴈治郎や藤山寛美も舞台に立っている(現在のロビーに昭和25年当時の歌舞伎の番付が飾られている)。昭和25年には威風堂々とした風格ある外観の大劇場として甦り、こけら落としに松竹関西大歌舞伎が上演された。しかし再開したのもつかの間…やがて娯楽は芝居から映画へと移り変わっていた。芝居に来る観客は日に日に減り続け、とうとう昭和28年に東映の専門館「進富映画劇場」となる。


 そこで思い出すのは、小津安二郎監督が珍しく伊勢で撮影した大映作品『浮草』だ。中村鴈治郎(よほど伊勢に縁があるようだ)演じる旅役者一座が、巡業にやってきた漁港で繰り広げる人間ドラマで、大王町波切という志摩半島にある小さな港町がロケ地になっている。近鉄電車とバスを乗り継いで1時間15分…小津監督好みの船着場に神社と路地と石段がある迷路のような通りを歩く。この映画が描いていた時代は、まさに芝居から映画に人気が移っていた昭和30年頃の話で、将来が無い一座を見限った役者に、売上を持ち逃げされて、とうとう解散してしまう結末が感慨深い。
 やがて、映画館も大劇場の時代から小劇場の時代へ…。昭和55年には、800席あった劇場を2館の小劇場に建て替えた。それでも角川映画全盛期に公開した『セーラー服と機関銃』では、場内に観客が入り過ぎて、できたばかりの壁をヘコませてしまったり、『ゴーストバスターズ』(1984)では入場者の多さに券を切るモギリが追いつけなかったり…と、しばらくヒットが続く。平成に入ると作品にも変化が訪れた。大手の映画館では掛かる事もなかった『ニュー・シネマ・パラダイス』が大ヒットしたのだ。平成14年からは館名を「進富座」に戻し、本格的ミニシアターとして生まれ変わる。昔のような大入りがなくても、良質な作品を送り続けてきたおかげで、毎回、足しげく通ってくれる常連客も増えてきた。現在は、若い人たちに背伸びするつもりで、映画を観に来て欲しいから…と、分かりやすさよりイマジネーションが必要な作品を選んでいるという。

出典:映画館専門サイト「港町キネマ通り」
取材:2017年4月

語り手:大屋尚浩

平成12年から始めた映画館専門サイト「港町キネマ通り」にて全国の映画館を紹介している。自ら現地に赴き、取材から制作まで全て単独で行う傍ら、平行して日本映画専門サイト「日本映画劇場」も運営する。

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語り手:大屋尚浩

平成12年から始めた映画館専門サイト「港町キネマ通り」にて全国の映画館を紹介している。自ら現地に赴き、取材から制作まで全て単独で行う傍ら、平行して日本映画専門サイト「日本映画劇場」も運営する。

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