岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

theater somewhere

昭和の薫りを色濃く残す商店街で
古き良き時代の名画に触れる

2017年12月06日

岐阜ロイヤル劇場(岐阜県)

【住所】岐阜県岐阜市日ノ出町1-20
【TEL】058-264-7151(岐阜CINEX内)
【座席】298席

 30年前に訪れた柳ヶ瀬は夜の街というイメージが強かった。美川憲一のヒット曲「柳ヶ瀬ブルース」の歌詞そのままに、雨は降っていなかったが、スナックの看板の灯りが照らす夜の街は、どこか哀愁を漂わせていた。そういえば、東映が得意としていたムード歌謡をモチーフに映画化した「夜の歌謡シリーズ」で、東映プログラムピクチャーの旗手・村山新治監督による『柳ヶ瀬ブルース』も梅宮辰夫演じる主人公はバーテンダーだった。映画の主人公を真似て、シーズンも終わりに近い10月の長良川で鵜飼を見学した後、立ち寄った柳ヶ瀬の居酒屋で出された鮎が美味かった。
 あれから25年ぶりに柳ヶ瀬を訪れた。今でも狭い路地に何軒もの飲み屋がひしめき合っている。ただ、以前より飲み屋の看板が少なくなった気がするのは時代の流れだろうか。代わりに女性が一人で立ち寄れそうなお店が増えている。平成17年に高島屋がリニューアルしてから、柳ヶ瀬は夜の街から昼の街に変わりつつあるようだ。そろそろお昼どきだったので、味噌カツが評判の「みそかつの店 一楽」に入ってみた。昔のままの店構えからは想像出来ない程、店内は若い女の子が多かったのには驚いた。昭和レトロがブームになってから女性客が増えたそうだ。

 そんな柳ヶ瀬商店街に昔ながらの上映スタイルと料金で名作を送り続けている名画座「ロイヤル劇場」がある。昭和52年に設立された当時はハリウッド大作と角川映画が全盛期で、『007/私を愛したスパイ』や『戦国自衛隊』に、300席の場内が満席となる日も多かった。時は経ち…時代の波に乗るのではなく街の雰囲気に歩調を合わせて、平成21年から始まったのが「昭和名作シネマ上映会」。国内外の名画を500円という低料金で、毎月4作品を週替わりで送り続けている。映画館の前に掲げられた往年の映画スターが描かれた絵看板に、通りを行く人たちは皆、立ち止まってカメラを構える。昔はどこの映画館にも作業工房があり、専属の職人たちが描いていたものだ。今では、こうした看板を描ける職人も少なくなったが、以前、絵看板を手掛けていたディスプレイ会社に相談したところ、最古参の職人さんが引き受けてくれて、既に使わなくなった道具を集めて描き上げてくれた。

 ロビーには、グリコアーモンドチョコレートの懐かしい電飾看板の売店がある。ガラスのショーケースに並んだお菓子はコンビニでも買えるものと同じなのに、何故か映画館で買うお菓子は美味しく感じる。場内に入ると天井の高さとスクリーンの大きさに感動。客席数は当時のまま、カップホルダーの付いていないシートに郷愁を感じる。入替制ではないので途中入場も連続観賞も許されるのも昔と同じだ。こんな夢のような環境で『大魔神』や『ナバロンの要塞』を観られる岐阜市民が羨ましい。基本フィルムでの上映だから、退色していたり切れてしまう事もある。こうしたトラブルが起こってもお客さんは大らかで、むしろ昔を懐かしんでいるという。一度はとうとう復旧できなかった作品もあったというが、お客様は納得されて、「また来るでイイわ」と笑顔で帰られたそうだ。こうしたハプニングも引っくるめて映画館で映画を観る面白さがあるのだ。

出典:映画館専門サイト「港町キネマ通り」
取材:2012年9月

語り手:大屋尚浩

平成12年から始めた映画館専門サイト「港町キネマ通り」にて全国の映画館を紹介している。自ら現地に赴き、取材から制作まで全て単独で行う傍ら、平行して日本映画専門サイト「日本映画劇場」も運営する。

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語り手:大屋尚浩

平成12年から始めた映画館専門サイト「港町キネマ通り」にて全国の映画館を紹介している。自ら現地に赴き、取材から制作まで全て単独で行う傍ら、平行して日本映画専門サイト「日本映画劇場」も運営する。

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