岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

theater somewhere

数多く映画のロケが行われた街に残る映画館

2021年01月27日

上田映劇(長野県)

【住所】長野県上田市中央2-12-30
【電話】0268-22-0269
【座席】270席

 長野県の東部に位置する上田市は、菅平と美ヶ原の二つの高原に囲まれ、中心を千曲川が流れている風光明美なスモールタウンだ。古くは信州における政治の中心地であった上田市には1200年余りの歴史的建造物と数多くの文化遺産が遺されており、昔と変わらぬ街並みを今も見られる事から数多くのロケ撮影が行われた。忘れられないのが、『犬神家の一族』の冒頭シーン。石坂浩二演じる金田一耕助が登場する常田の街並みは、市川崑監督によるセルフリメイクにも使われている。記憶に新しいのは、細田守監督のアニメ『サマーウォーズ』だ。舞台が上田市であり、駅前から商店街まで市内の各所がアニメの中で再現されていた。作中にも登場した商店街にある学生に人気の「富士アイス」で上田市民のソウルフード「自慢焼き」を購入して市内をブラブラ食べ歩きする。1個80円で今川焼よりも一回り大きく、かなり食べ応えがある逸品。これでは若者に人気があるわけだ。

 上田駅から10分ほど歩いたところにある中央商店街は昭和の雰囲気が今でも色濃く漂う一杯飲み屋や定食屋が軒を連ねている。その通りに入ってすぐ、「上田映劇」が建っている。この界隈は、昔から上田の娯楽の拠点で、明治時代には末広座という芝居小屋があり、そこに大正6年に建てられたのが、前身となる「上田劇場」だった。当時は1階には桟敷と花道があり、回り舞台仕様で歌舞伎座と同じつくりをしていたという。格天井と呼ばれる細かな造形が施された天井は、オープンした時にお祝いとして帝国劇場から譲り受けたものでチケット売り場に併設された事務所には帝国劇場の支配人から寄せられた祝いの書簡が飾られている。

 「上田劇場」が映画館となったのは、昭和の初めに創業者である駒崎鉄五郎氏が上田市を訪れた際に買い取り、映画館に改装したのが始まりである。しばらくの間はお芝居と映画を交互に興行を行っていたが、戦後には常設の映画館となった。現在も芝居小屋の名残りはスクリーン前にある広いステージと、コの字型に囲まれた2階客席の設計に見る事ができる。劇場の裏には楽屋として使われていた住居があり、馬の頭などの小道具や地下には回し舞台の装置が残っていた。やがて娯楽の中心が映画に変わると館名を「上田映画劇場」と変えて全盛期には、てけつが2ヵ所、もぎり、映写技師、場内清掃を合わせて常時5〜6人の従業員が働いており、中には住み込みで働く者もいたという。

 何度か改装を行っている「上田映劇」だが劇場のアチコチに昔の姿を見る事が出来る。創業時は畳の桟敷席だった今では使われていない2階席だが、昔からの常連さんは「映画を観るなら、どんなに空いていても2階席」と、こだわっていた方も多かった。昭和48年から平成23年までは大映・松竹の作品をメインとしつつも洋画の上映も行っていた。

 「上田映劇」に転機が訪れたのは平成7年に公開された本木雅弘と吉岡秀隆主演の『ラストソング』だった。公開時に地元のレコード店と提携して上映前にライブを行ったところ、劇場がライブ用に設計していないため電源が飛び、スピーカーから音が出ないまま、生音で演奏をすることに。しかし、会場は盛り上がり「だったら映画とライブ両方楽しめる劇場にしてしまおう」と、翌年にスクリーン前のステージを増築して左右にパイプでやぐらを組み、巨大スピーカーを設置してしまったのだ。その後、プロのミュージシャンを招いたり、地元で活動しているアマニュアバンドに劇場を貸し出す等、幅広く活用されている。リニューアル当初は、映画館でライブが観れるという事で、話題になり、音楽以外にもお芝居や落語といった様々な公演に使われたという。創業時は無声映画も上映していたため生の楽団が演奏するにあたって芝居小屋の作りは大いに役立ったらしく、時代を超えてライブも出来る劇場の原点は芝居小屋だった創業時から培われていたものなのかも知れない。

 しかし、肝心の映画興行における来場者の減少に歯止めを掛ける事は出来ず、平成23年4月をもって「上田映劇」は上映を終了する事となる。それでも劇場の存続を求める有志の人たちが、特別上映やイベントの開催を続け、平成28年12月、歴史的価値を持つ「上田映劇」を復活運営及び恒久的保存していこうと「上田映劇再起動プロジェクト」をスタート。平成29年4月に、創立100周年を記念した定期上映を再開すると、多くの観客が来場したのだ。そして現在、映画によって地域の芸術文化活動の活性化に寄与することを目的とした「特定非営利活動法人 上田映劇」を設立。「上田映劇」は再び映画館としての道を歩みはじめている。


出典:映画館専門サイト「港町キネマ通り」
取材:2009年10月

上田映劇のホームページはこちら
http://www.uedaeigeki.com/

語り手:大屋尚浩

平成12年から始めた映画館専門サイト「港町キネマ通り」にて全国の映画館を紹介している。自ら現地に赴き、取材から制作まで全て単独で行う傍ら、平行して日本映画専門サイト「日本映画劇場」も運営する。

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語り手:大屋尚浩

平成12年から始めた映画館専門サイト「港町キネマ通り」にて全国の映画館を紹介している。自ら現地に赴き、取材から制作まで全て単独で行う傍ら、平行して日本映画専門サイト「日本映画劇場」も運営する。

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