岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

theater somewhere

住宅街の中…マンションの2階にある映画館

2021年01月19日

下高井戸シネマ(東京都)

【住所】東京都世田谷区松原3-27-26
【電話】03-3328-1008
【座席】126席

 自分の住む駅に小さくても行きつけの喫茶店と古本屋、そして映画館があるのが理想的だ。休日、商店街を抜けてブラブラと映画館の前に貼ってあるポスターを眺めて、気に入った映画があればフラリと立ち寄る。そんな街が世田谷線がゴトゴト走り、京王線が交差する下高井戸だ。京王線で新宿から15分…いつも活気溢れる東西に伸びる二つの商店街と駅前には昭和の雰囲気を残す下高井戸駅前市場がある下高井戸は商店街の街だ。駅から歩いて1~2分程の場所に街の小さな映画館「下高井戸シネマ」がある。

 昭和30年代前半に木造平屋建てでオープンした「京王下高井戸東映」という東映の封切館が前身だ。名画座に転向したのは京王電鉄の系列会社・京王映画が「下高井戸京王」という館名で経営を引き継いだ昭和55年のこと。当時、映画が斜陽の時代を迎え名画座に転向する封切館が多かった時代だ。老朽化していた建物を壊して閉館するか、名画座で再スタートを切るかという決断の末、名画座を選んだことが結果的には正解だった。昭和61年に現在のマンションに建て替えられ、その2階にリニューアルオープンする事となるのだが、その半年後に今度は京王映画が、映画興行から撤退。そこから別の会社が引き継いで、現在の「下高井戸シネマ」という館名になった。

 ところが平成10年にシネコンとミニシアター・ブームが到来すると、個人経営のロードショー館や名画座が次々と閉館していき「下高井戸シネマ」も同様に売り上げの伸び悩みから経営する会社が手を引くという事になる。いくつもの難局を乗り越えてきた「下高井戸シネマ」もいよいよ閉館か?という時に、地元の下高井戸商店街の人たちから「何とか存続できないか?」という声があがると、3月に閉館が決まっていた所をギリギリのタイミングで新会社(有)シネマ・アベニューを設立して存続を決定する。設立にあたり地元の名士たちが保証人として協力してくれるなど、地元から映画の灯を消してはならないという人々と映画館の熱意が存続を実現させたのだ。

 その時に始めたのが、現在も続く1年間有効の「下高井戸シネマ・友の会」という会員システムだ。一般3500円の年会費さえ払えば全ての作品を1000円を切る990円で観る事が出来、さらにスタンプカードにスタンプが5個集まれば招待券が1枚もらえて、商店街の街・下高井戸らしく商店街で使用出来るスタンプを35枚ももらえるが嬉しいサービスだ。これは映画館から離れてしまっていた人たちにも、もっと足を運んでもらって映画館で映画を観る良さを再認識してもらいたいという思いから始まったサービスで、そのおかげで休日の朝から会員証を片手に、今ではすっかり珍しくなった独立したチケット窓口に長蛇の列を作る映画ファンの姿がよく見られる。そのシステムに敏感に反応した40~50代の主婦の人たちによる口コミであっという間に広まってあっという間に会員が1000人を越えてしまったという。都内でも珍しく住宅地の中にあることから、お客様の層として女性客が多く友達同士誘いあってグループで鑑賞される姿がよく見られる。

 場内は比較的、高く段差が付いているおかげでどこからでも観易く、イスの背もたれが身体にシックリと馴染むので朝から続けて映画のハシゴをしても苦にならない。劇場が入っているマンションを建設する際に映画館が入ることを前提として造られているから音の反響も天井の高さも理想的なのだ。 上映作品はあえてジャンルにこだわらないのが「下高井戸シネマ」の特長。邦画・洋画を問わずハリウッドメジャーからミニシアター系の作品に至るまで良質な作品を一早く安い料金で観る事が出来る。だから過去のヒット作も『タイタニック』から『ポネット』、邦画では『フラガール』や『かもめ食堂』など実にバラエティ豊かだ。数あるヒット作の中でも龍村仁監督の『地球交響曲─ガイアシンフォニー』は大好評のプログラムで、龍村監督からも「下高井戸シネマ」で上映して欲しいと直々のラブコールがあったほど。元々は地元の女性客から「こういう映画があるんだけど…」と持ちかけられた作品だったという。丁度、レイトショーをやっていない日曜日に試しで上映したところ、大反響を呼び毎年上映する事となり、『地球交響曲─ガイアシンフォニー』といえば「下高井戸シネマ」が思い出されるまでになった。地元のファンと共に創り上げて行く映画館はこの街にとってなくてはならない存在である。


出典:映画館専門サイト「港町キネマ通り」
取材:2001年8月

下高井戸シネマのホームページはこちら
http://www.shimotakaidocinema.com/index.html

語り手:大屋尚浩

平成12年から始めた映画館専門サイト「港町キネマ通り」にて全国の映画館を紹介している。自ら現地に赴き、取材から制作まで全て単独で行う傍ら、平行して日本映画専門サイト「日本映画劇場」も運営する。

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語り手:大屋尚浩

平成12年から始めた映画館専門サイト「港町キネマ通り」にて全国の映画館を紹介している。自ら現地に赴き、取材から制作まで全て単独で行う傍ら、平行して日本映画専門サイト「日本映画劇場」も運営する。

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