岐阜新聞 映画部

映画にまつわるエトセトラ

Rare film pickup

リアルにゲイの周辺を見せる~ちょっとおせっかいな2丁目ガイド

2023年06月22日

愛に包まれた優しく美しいLGBTQ映画

© 2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会

映画の冒頭、仕事を終えたであろう浩輔(鈴木亮平)が、夜の街を闊歩するシーンがある。その体越しに見えるのは、寄席の "末広亭" で、新宿の3丁目の繁華街であることがわかる。

新宿3丁目は、新宿駅東口から伸びた新宿通りを東進して、伊勢丹のある明治通りと交わる交差点をさらに東に行った一角をいう。

かつては新宿文化会館のビルがあって、映画館や劇場があり、70年代のはじめ頃は、アングラ、アートの発信の場であった。一応、碁盤目の細い通りで区切られていて、両側にネオン煌く酒場などが入るビルが並ぶ。同じ新宿でも歌舞伎町などとは少し趣が異なっていて、昔から客引きなどが道を塞ぐようなことはなかった。

浩輔が目指すのはその先、さらに東の御苑通りを越えた2丁目である。

新宿2丁目は、知る人ぞ知る "ゲイの街" だが、かつては花街で、俗にいう "青線" だった。青線というのは、昭和33(1958)年に売春防止法の施工により廃止された赤線と区分される売春が行われていた場所のことを言うが、日本では敗戦後、GHQにより公娼は廃止の指令があったため、半ば公認のかたちで地域限定で売春が行えた場のことをいう。赤と青の違いは公式か否かの違いだが、赤線自体が曖昧なものだったのだから、この区分も曖昧で悪く言えば格差の使いわけだったのかも知れない。

浩輔がゲイの友人たちと酒を酌み交わす場は、多分、この新宿2丁目。

南を新宿(御苑)通り、北を靖国通りに挟まれた、そんなに広くはない区画で、ほぼ真ん中にメインストリートの "仲通り" がある。最初に2丁目を見た80年代のはじめ頃は、時間帯によって色を変える変幻自在の妖しい雰囲気があった。

ある日の夜、その仲通りで、大柄な男性とすれ違った。一瞬目が合ったその人は、作家の中上健次だった。彼はその後、2丁目を舞台にした「讃歌」を発表している。

当時は思わず目を背けてしまうケバい装飾の種種の店が並んでいたが、浩輔たちが集う居酒屋は垢抜けていて、ケーキ店は違う場所かも知れないが、あってもおかしくはない。2丁目の雰囲気も変わったものだと実感する。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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