ハリネズミのイラストが出迎えてくれる映画館
2020年07月15日
ユジク阿佐ヶ谷(東京都)
【住所】東京都杉並区阿佐ヶ谷北2−12−19 B1F
【電話】03-5327-3725
【座席】44席
館名のユジクは、ロシアのアニメーション作家ユーリー・ノルシュテインの代表作『霧の中のハリネズミ』に出てくるハリネズミの名前ヨージックから取られたもの。閑静な住宅地で一際目を惹くオレンジのファサードや劇場のアチコチに描かれているイラストである。元々ここはアートアニメーションの小さな学校だった場所。完成した作品を上映できる映画館がなかなか見つからなかったため、だったら試写室もあるここを映画館にしてしまおう…と、才谷さんは2館目の映画館を作ってしまったのだ。
階段を降りると木の床と一枚板のベンチが印象的なホワイエがある。ガラスで仕切られたエントランスの奥にあるロビーは学校のスタジオだったスペース。壁の片側が特注の巨大な黒板となっており、黒板アート作家が特集が変わるたびに1日がかりで描く作品は圧巻で、タイミングが合えば、制作過程を見る事もできる。受付では阿佐ヶ谷で大人気のお店ジェラテリアシンチェリータのジェラートが販売されており、場内に持ち込んで映画を観ながら楽しめるのが嬉しいと評判だ。試写室だった場内も段差がしっかり付いていてとても観易く、木の床も作品の雰囲気にマッチしている。何と言っても音響は抜群で、派手な音よりもむしろ『レッドタートル ある島の物語』のような風や波といった音量のレベルが低い自然の音にこそ効果を発揮する。
「女性が来やすく、子供から大人まで楽しめる作品を上映する映画館」というコンセプトで、上映作品も女性向けの優しいトーンの作品が多い。例えば「鎌仲ひとみ映画祭」だったり、「ムーミンアニメーションフェスティバル」や「ヤン・シュヴァンクマイエル監督特集」などなど…かなり感性の高い良質な作品がズラリと並ぶ。お客様の層も30~40代の女性をメインとしつつ、休日ともなると学生や20代若者の姿が目立つ。また、ロビーでは上映作品に合わせたイベントが開催されており、チェコアニメ特集で上映された『ひなぎく』では、白い小さなテントをディスプレイし、専門家を招いて主人公の少女たちが付ける花冠を作るワークショップが女性のお客様に好評だった。
コチラでは「レイトショー友割り」という何ともチャーミングなネーミングの割引サービスがある。これは「もっと友人や家族を誘って映画を観てもらいたい」という事から、該当する作品を2名以上で観賞すると割引になるというもの。仕事帰りに友だちを映画に誘って、観終わってから映画の感想を語り合うのも良いのではないだろうか。
出典:映画館専門サイト「港町キネマ通り」
取材:2017年3月
ユジク阿佐ヶ谷のホームページはこちら
https://www.yujikuasagaya.com/
語り手:大屋尚浩
平成12年から始めた映画館専門サイト「港町キネマ通り」にて全国の映画館を紹介している。自ら現地に赴き、取材から制作まで全て単独で行う傍ら、平行して日本映画専門サイト「日本映画劇場」も運営する。
語り手:大屋尚浩
平成12年から始めた映画館専門サイト「港町キネマ通り」にて全国の映画館を紹介している。自ら現地に赴き、取材から制作まで全て単独で行う傍ら、平行して日本映画専門サイト「日本映画劇場」も運営する。
東京杉並区にあるJR中央線の阿佐ヶ谷駅を北口に出る。小ぢんまりとした駅前ロータリーから数百メートルほどの路地に八百屋や飲食店が肩寄せ合うように軒を連ねるスターロード商店会を歩く。決して規模を拡張せず、品のあるたたずまいを何十年も守り続けた通りだ。この路地を抜けたところに年季の入った老齢のシネフィルたちを唸らせる名画座「ラピュタ阿佐ヶ谷」があるのだが、そこからすぐ近くにオーナーの才谷遼さんが監督した『セシウムと少女』をこけら落しに2015年4月25日にオープンした「ユジク阿佐ヶ谷」がある。