岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

theater somewhere

大阪の下町で地元の人たちに愛されてきた映画館

2020年03月18日

布施ラインシネマ(大阪府)

【住所】大阪府東大阪市足代新町7-4
【電話】06-6781-1567
【座席】Cinema1:201席 Cinema2:188席 Cinema3:183席 Cinema4:183席 Cinema5:132席 Cinema6:111席 Cinema7:203席

 大阪の下町・布施駅から線路沿いを歩いて5分ほどのところに、戦前から地元の人々に親しまれている映画館があった。平成9年12月にシネコンとしてオープンした「布施ラインシネマ」だ。東大阪市がまだ布施市だった戦後間もない頃、バラックが建ち並び、闇市で賑わっていた駅前に次々と映画館を設立されていた昭和27年8月にオープンした、客席数1000席の東宝・日活と洋画を上映する「リオン座」が前身となる。昭和・平成・令和と長年に亘って数多くの名作を送り続けてきた街の映画館「布施ラインシネマ」が令和2年2月29日をもって閉館した。

 運営する岡島興業(株)が昭和8年に松竹の封切館「昭栄座」を設立すると、戦後すぐの昭和21年には大映・日活の封切館「朝日劇場」、昭和24年には鉄筋二階建て冷暖房完備・客席数1500席を有する洋画専門の大劇場「東大阪劇場」を立て続けに設立。日本映画が最盛期を迎える昭和30年代以降も、近隣に次々と映画館を新設した。やがて、娯楽の多様化によって映画も斜陽期を迎えた昭和50年代以降は、布施駅周辺にあった映画館が次々と閉館。平成に入ってシネコンの時代が訪れると、いち早く「リオン座」を解体して、『タイタニック』をオープニング作品として、7スクリーンを有する「布施ラインシネマ」を立ち上げた。線路を挟んだ反対側にはアネックスとして「南館」が加わり、しばらく10スクリーン体制を組んでいた。当時はまだシネコンが関西に定着しておらず、新しいシステムに戸惑う観客も多かった。

 当時はまだ入替制も導入しておらず、とにかくお客様を流し込んでいた時代…最終的に『タイタニック』は、1年のロングランヒットとなり、半年後には『千と千尋の神隠し』が大ヒットを記録。翌年には『アルマゲドン』と『スター・ウォーズ エピソード1 ファントム・メナス』が公開されて興行界の転換期を迎えた。お客様は昔馴染みの方が中心で、休日には自転車に乗った子供たちが友だち同士連れ立って来る光景が見られるのも街なかのシネコンならでは。駅が近くアーケード商店街に隣接している立地の良さから、近隣のお母さんたちは、わざわざ電車に乗って人混みの映画館に行くよりも、買い物ついでに立ち寄れる利便性を選ばれている。男性のお客様は特に何を観るか決めずに映画館にぶらっとやって来てから決めるという方が多く、タイムテーブルの前で何を観ようかしばらく考えて入場したおじさんが「時間を潰すために観た映画が意外と面白かった!」と満足気に帰られる光景もよく見られた。

 1階でチケットを購入して2階から7階にある7つの劇場に向かう。デジタルに切り替わるまではフロアが分かれていたため、フィルムをエレベーターで何度も運搬したり、時にはフィルムを担いで階段を上り下りしていたという。アネックスの「南館」で同じ映画を時間差で上映していた時は、線路の反対側にフィルムを急いで運んでいたそうだ。また、映画以外にもコチラには隠れた名物があった。それは若い人たちに人気があったコンセッションで販売されていたカレースナックだ。マシンがレトロで面白いと写真に撮ったり、一度食べたらそれが病み付きになってしまったと、わざわざスナックだけを買いに訪れる方も多かった。ここには毎日のように来てくれる方や、気に入った作品を何回も観に来る方がいて、地域の人たちの生活に映画が習慣として組み入れていたお客様が多かった。顔見知りの常連さんは、映画好きのスタッフを見かけると「おったおった!」と近づいて、今観たばかりの映画について楽しそうに話しかけてくる。そういった映画を愛する人たちに支えられていた映画館は、昭和8年9月から送り続けてきた名作87本をラストショーとして、87年の歴史に幕を閉じた。


出典:映画館専門サイト「港町キネマ通り」
取材:2018年1月

語り手:大屋尚浩

平成12年から始めた映画館専門サイト「港町キネマ通り」にて全国の映画館を紹介している。自ら現地に赴き、取材から制作まで全て単独で行う傍ら、平行して日本映画専門サイト「日本映画劇場」も運営する。

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語り手:大屋尚浩

平成12年から始めた映画館専門サイト「港町キネマ通り」にて全国の映画館を紹介している。自ら現地に赴き、取材から制作まで全て単独で行う傍ら、平行して日本映画専門サイト「日本映画劇場」も運営する。

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