岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

theater somewhere

埋もれた映画に愛の手を…商店街の中のこだわり名画座

2019年03月27日

シネマノヴェチェント(神奈川県)

【住所】神奈川県横浜市西区中央2-1-8 岩崎ビル2F
【電話】045-548-8712
【座席】28席

 相鉄線と京急線…ふたつの私鉄に挟まれた横浜の下町にある藤棚商店街は、地元の人たちが利用する普段着の商店街だ。通りには意外とカフェや喫茶店が多く、結構、お年寄りも利用されているようだ。その中から、西横浜駅の近くにある自家焙煎がウリの昔ながらの喫茶店「View」に入ってみる。店内はローストされたコーヒーの香ばしい薫りが漂う。入口には袋に入った豆が置かれ、マスターは慣れた手つきでドリップする…こんな店のコーヒーとナポリタンは間違いなく美味い。豆は100gごとに挽いてくれるので帰りに200g買った。

 こだわりの店主がいる喫茶店がある商店街には、こだわりの館主がいる映画館や古本屋があるのが望ましい。「こんな映画が観たいんだけど…」とか「こんなゲストを呼んで欲しいんだけど…」など、マニアックな観客の要望に、面白ければ応えてくれる映画館が藤棚商店街の真ん中にある。かつて、川崎にあった伝説的なシネマバー「ザ・グリソムギャング」のオーナーが、平成27年にオープンした「シネマノヴェチェント」だ。商店街をちょっとだけ横道に入った願成寺という風情のある真言宗のお寺の斜向かい。茨城の絵看板師が描いた映画スターの絵看板を目印に行けばよい。

 壁一面に貼られた映画のポスターやスチル写真にワクワクしながら、細長い階段を上がる。2階は、バーカウンターを兼ねた受付と、上映後にバーに変わるロビーがある。座席数28席の場内は、日本一小さいと自負されているが、この狭さが実に心地良いから不思議だ。

 この場内とバーの威力を発揮するのが、通好みのゲストを招いての特集上映&トークイベント。狭い場内だからゲストと観客の距離はものすごく近い。イベント終了後に来場されたゲストを囲んでの飲み会が更に盛り上がる。フィルム上映が基本なので、DVD化されていないレアものを観たいなら迷わずここを選ぶべきだ。例えば、中野昭慶監督特集では『東京湾炎上』、にっかつ80周年記念作品と謳いながら大コケした『落陽』では主演の加藤雅也氏を招いたり…昭和後期にメジャーが製作した怪作が好きな私としては、マニアックなセレクトには毎度唸らせられる。

 映画だけに止まらず、日本アニメーション40周年記念として『母をたずねて三千里』と『赤毛のアン』全話をオリジナル16ミリフィルムで1ヶ月間の特集を組んじゃった時は、さすがにマジか!と驚いた。こんな感じの映画館だから、観客も巻き込んで映画の作り手や送り手を応援しようというスタンスの上映企画が、とてもユニークだ。

 例えば、どのレーベルも手を出さなかったB級C級の映画ばかりをリリースするレーベルの販促上映会を催したり(入場券の代わりにブルーレイを購入するのが条件)、埋もれた名作を発掘、更には現地でフィルムを焼いて自社配給までしたり…と映画館の枠を飛び越えた「シネマノヴェチェント」は、思いっきり映画を楽しめる「映画の遊び場」だ。


出典:映画館専門サイト「港町キネマ通り」
取材:2015年8月

語り手:大屋尚浩

平成12年から始めた映画館専門サイト「港町キネマ通り」にて全国の映画館を紹介している。自ら現地に赴き、取材から制作まで全て単独で行う傍ら、平行して日本映画専門サイト「日本映画劇場」も運営する。

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語り手:大屋尚浩

平成12年から始めた映画館専門サイト「港町キネマ通り」にて全国の映画館を紹介している。自ら現地に赴き、取材から制作まで全て単独で行う傍ら、平行して日本映画専門サイト「日本映画劇場」も運営する。

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