岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

theater somewhere

長野県最古の鉄筋建築物として重厚な姿を残す映画館

2019年07月17日

千石劇場(長野県)

【住所】長野県長野市南石堂町1367
【電話】026-226-7665
【座席】シアター1:200席 シアター2:100席 シアター3:40席

 長野駅のすぐ近く、古くから繁華街として栄えてきた石堂町に、やっと車1台が通れるほどの狭い路地がある。飲食店が軒を連ねる路地の角に、重厚な佇まいの映画館「千石劇場」が昔と変わらない姿で建つ。オープンした昭和25年12月は、まだ県内では映画館は木造建築が常識だった時代で、初の鉄筋建築物として話題になった。客席数700席を有した大劇場の中には喫茶店が併設されていて、当時かなりモダンな作りだった。現在も外観は当時のままで、戦後の近代建築として歴史的にも貴重な建物と言えるだろう。

 こけら落としであるモーリン・オハラ主演の活劇『バグダッド』にあわせて、オープン当日は日劇ダンシングチームによる歌と踊りの豪華ショウが華々しく開催された。その後も西部劇を中心としたハリウッド娯楽映画の専門として人気を博し、数多くの名作を送り続けた。中でも最大のヒット作というと『未知との遭遇』と『E.T.』などのスピルバーグ監督作品だった。初日には映画館の周りを観客がグルリと一周して、とうとう行列は大通りにまで達してしまった。あまりの人出に場内へ流し込みでドンドンお客様を入れたものだから扉が閉まらなくなったそうだ。

 昭和63年には敷地内に200席の「千石小劇場」をオープン(現在は閉館している)。平成11年には「千石劇場」の2階席を2館に分離して、合計3スクリーン体制として現在に至っている。現在の上映作品は東映の邦画をメインとしており、子供たちの休みシーズンになると仮面ライダー等のヒーロー物で、ロビーから場内まで大いに賑わいをみせる。

 元気いっぱいの小中学生が、友達同士で連れ立ってヒーローの活躍に熱狂している姿を見るのは良いものだ。ちょうど戦隊ものが掛かっていたので、ショーケースにはアニメやヒーローグッズが並べられており、甘いスナック菓子の香りがロビー全体に広がっていた。いつも不思議に思うのだが、どうして映画館の売店で買ったチョコレートは美味しいのだろう。

 チケット売場で当日券を購入してロビーに入る。中央の売店を挟んで、向かって左が1階にある「シアター1」、右に2階の「シアター2」と「シアター3」に上がる階段がある。ワンスロープの場内は天井が高いおかげで傾斜も強く、前列の人の頭が邪魔になる煩わしさがないのが嬉しい。近年は若者の遊び方が昔と変わってしまい、街に人が出て来ない…という現象が起きている。ここ数年で、最盛期には市内に16館もあった映画館が次々と閉館してしまったのもそれが原因だ。

 そんな状況でも昔と変わらない根強い人気を誇っているのはやはり子供向けの映画で、電車やバスを乗り継いでやって来る小中学生にとって街の映画館は貴重な存在だ。日本全国を見渡しても、昔と変わらない姿で営業を続けている老舗映画館が少なくなってしまった昨今、駅前でどっしりと踏ん張っている昔ながらの映画館「千石劇場」という財産を持っている長野市民を羨ましく思う。


出典:映画館専門サイト「港町キネマ通り」
取材:2009年10月
※写真は2009年に撮影したものです。現在、館内は禁煙となっており、ロビーの灰皿は撤去されています。

語り手:大屋尚浩

平成12年から始めた映画館専門サイト「港町キネマ通り」にて全国の映画館を紹介している。自ら現地に赴き、取材から制作まで全て単独で行う傍ら、平行して日本映画専門サイト「日本映画劇場」も運営する。

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語り手:大屋尚浩

平成12年から始めた映画館専門サイト「港町キネマ通り」にて全国の映画館を紹介している。自ら現地に赴き、取材から制作まで全て単独で行う傍ら、平行して日本映画専門サイト「日本映画劇場」も運営する。

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