岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

theater somewhere

自分たちの観たい映画を自分たちの映画館で…

2019年06月05日

シネ・ウインド(新潟県)

【住所】新潟県新潟市中央区八千代2-1-1 万代シテイ第2駐車場ビル1F
【電話】025-243-5530
【座席】94席

 新潟市は信濃川を境に、川向こうにある江戸時代より栄えてきた繁華街の古町地区と、バスターミナルと上越新幹線の開通により昭和40年以降から新しく形成されてきた万代地区といった新旧市街地に分けられる。戦後、高度経済成長期を迎え、県下最大の娯楽街・歓楽街として賑わった古町界隈には、当然の事ながら15館近くの映画館が軒を連ねた。そんな古町にあった「名画座ライフ」が、昭和60年3月に閉館すると、映画評論家・荻昌弘氏が、当時連載をしていた新潟日報で、この出来事を嘆く檄文を県民に向かって述べた。

 その記事に書かれていた言葉を自分の責任として感じた齋藤正行氏は、勤めていた会社を辞めて映画館設立に向けて行動を起こす。その思いに賛同したのは、映画ファンだけではなく演劇や音楽などの文化芸術活動に携わる人々など。記事の掲載から4ヵ月後には、活動大写真上映会を開催。その後も地道な上映活動と募金活動を続け、昭和60年12月に自分たちの観たい映画を掛けられる新潟・市民映画館「シネ・ウインド」をオープンする。

 参加メンバーは学生からお年寄りまで幅広く、コアスタッフは100名ほど。劇場が発行している月刊誌の編集から発送業務、中には電話番やチラシの折込、お花の世話をするためだけに来てくれるスタッフもいる。無理の無い範囲でできるだけのことをして、皆で映画館を支えているのだ。上映作品の選定やイベントの企画など、面白そうであればどんどん採用してくれるので、スタッフからはユニークな企画がどんどん上がってくるという。

 駅前通りを港に向かって歩くこと10分ほど…バスターミナルの斜向いの駐車場ビル1階に「シネ・ウインド」はある。映画館に見えない映画館を…というコンセプトを基に、フィルムを模した鉄のオブジェが施された外観と、映画の看板やポスターを掲げていないため、最初は映画館と気づかずに通り過ぎてしまう方も多かった。ロビー壁面の本棚には映画関連書籍がギッシリと並んでおり、まるで映画図書館のよう。ここにある書籍は会員から持ち込まれたものが多く、中には映画好きだった故人のご家族が有効に使って欲しいから…と寄付してくれたものもあるそうだ。

 まもなく設立から35年が経とうとしているが、今でも多くの市民が、自分たちの映画館として「シネ・ウインド」を守り続けている。毎年開催する周年祭のパーティーには、県外に出てしまった人たちも、この日だけは駆けつけてくれるという。また、映写機をデジタルにする時も全国から募金に協力してくれたりと、真の意味でここは新潟市民の映画館なのだ。


出典:映画館専門サイト「港町キネマ通り」
取材:2017年11月

語り手:大屋尚浩

平成12年から始めた映画館専門サイト「港町キネマ通り」にて全国の映画館を紹介している。自ら現地に赴き、取材から制作まで全て単独で行う傍ら、平行して日本映画専門サイト「日本映画劇場」も運営する。

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語り手:大屋尚浩

平成12年から始めた映画館専門サイト「港町キネマ通り」にて全国の映画館を紹介している。自ら現地に赴き、取材から制作まで全て単独で行う傍ら、平行して日本映画専門サイト「日本映画劇場」も運営する。

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