岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

theater somewhere

高知市内に創業当時の姿で映画の火を灯す

2019年04月24日

高知あたご劇場(高知県)

【住所】高知県高知市愛宕町1丁目1-22
【電話】088-823-8792
【座席】150席

 高知県には、夏の飲み物として冷やし飴というのがある。お湯で溶いた水飴を冷やして、最後にお好みで生姜を加える…甘いのにさっぱりしていて、子供から大人まで人気のおやつ代わりの飲み物だ。高知城下の追手筋で開かれている日曜市(江戸時代から続く市場で朝市ではない)でも売られており、値段は一杯150円。紙コップにトロトロと注いでくれたお店のおばちゃんから、「高知ではどこの家でも作って飲んでいる郷土の飲み物なんですよ」と教えてもらう。とても美味しかったと告げると満面の笑みでお礼を言われる。高知では「ありがとう」の語尾(とう)が上がる柔らかなイントネーションで親しみを感じさせる。

 今回の目的は駅の反対側…北口から西へ10分ほど、表通りから1本裏通りに入ったところにある赤茶色の壁面が印象的な映画館「高知あたご劇場」だ。南口とは打って変わって、北口側は観光客が少なく市民の生活圏といった雰囲気だ。建物は昭和30年4月1日に洋画封切館「愛宕劇場」として創業した当時のまま。向かいにあったサイダーやラムネを作っていたソーダ工場は60年経って病院に変わったが、映画館だけ昭和のまま時が止まったかのように異彩を放っている。「立て直さなかったのはお金が無かったから」と二代目館主の水田朝雄さんは笑う。

 設立当時、市内で一番の後発だった「愛宕劇場」には日本映画はブッキングしてもらえず、どこもやりたがらないB級C級の洋画ばかりやっていた。そのため、こけら落としはB級の西部劇『荒野の襲撃』と、ディーン・マーティンとジェリー・ルイスのコメディ『底抜け艦隊』の二本立。それでも土日は札止めになるほどチケット売り場には長い行列ができたそうだ。また、いち早く場内にクーラーを導入したため、夏場になると涼を求めて多くのお客様が来場するようになった。

 やがて、映画人気に劇場の数が追いつかなくなると、二番・三番館として日本映画も回してもらえるようになり、豊田四郎監督の『夫婦善哉』と成瀬巳喜男監督の『浮雲』という夢のような二本立も行われていた。更に東映の任侠映画ブームが到来すると、毎日のように立ち見が続くほどの盛況ぶりだったという。最古参となった今でもフィルム映写は続いており、映写室には年季の入った二台の映写機が現役で活躍。床に目を落とすと、絵看板をここで描いていた時代の名残でペンキの跡が点々と付いていた。


出典:映画館専門サイト「港町キネマ通り」
取材:2016年4月

語り手:大屋尚浩

平成12年から始めた映画館専門サイト「港町キネマ通り」にて全国の映画館を紹介している。自ら現地に赴き、取材から制作まで全て単独で行う傍ら、平行して日本映画専門サイト「日本映画劇場」も運営する。

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語り手:大屋尚浩

平成12年から始めた映画館専門サイト「港町キネマ通り」にて全国の映画館を紹介している。自ら現地に赴き、取材から制作まで全て単独で行う傍ら、平行して日本映画専門サイト「日本映画劇場」も運営する。

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