岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

theater somewhere

若者が魅力に感じる街にしようと立ち上げた映画館

2018年11月07日

大川シネマホール(福岡県)

【住所】福岡県大川市酒見215-1 おおかわ交流プラザ4F
【電話】0944-85-8002
【座席】361席

 筑後川を挟んで佐賀県との県境にある福岡県大川市は、古くから家具の街として栄えてきた。昔は上流にある日田から筏流しで運ばれて来た材木の集積地であり、やがて木工の街に発展する。現在は廃線となった旧・国鉄佐賀線の大川駅に降り立つと、木の香りがホームにまで漂って来たという。ちなみに、演歌歌手の大川栄策は大川市出身で、芸名の大川は出身地から取られた(タンスを持ち上げるパフォーマンスはここから来たのか…)。名付け親の古賀政男も大川出身で市内に記念館もある。つまり、昭和の歌謡界をリードした二人の歌手を輩出していることになるのだ(すごい!)。

 大川の中心部には、隣町の柳川から西鉄バスで行かなくてはならない。佐賀方面に向かって20分ほどバスに揺られると、大きな映画館の看板が見えてくる。大川を拠点として医療・福祉に力を注いでいる国際医療福祉大学・高邦会グループが運営する映画館「大川シネマホール」だ。幅広い世代の人たちが住みやすく、若者に魅力を感じてもらえる街にしよう…と、同グループが100周年記念事業の一環として「おおかわ交流プラザ」を平成27年に設立。1階にはカフェと書店、2階に認定のこども園、3階にデイケア施設、そして4階に「大川シネマホール」が入る文化教養・医療・福祉の機能を備えた複合施設だ。

 ロビー中央には、JR九州のクルーズトレイン「ななつ星 in 九州」の客室装飾を手掛けた木下正人による大川組子の壁面パーテーションと、前田建具製作所による立体組子という独自の細工が施されたテーブルを展示。さらに、奥の展示スペースでは、大川の家具職人が手掛けた作品が、毎回テーマを変えて展示されているのは木工の街ならでは。スタジアム形式の場内は、座席の間隔を通常よりも広めに取り、中央にはプラス300円で利用できるプレミア席を設けている。車椅子スペースもプレミア席の近くにあるため、スクリーンが理想的な目線の位置にあるのが大きな特長だ。安心して観れるから…と介助者無しで一人で来られる方がいるほど、誰にも優しい設計となっている。

 オープンからしばらくは、初めての映画館運営に戸惑うことも多かったスタッフの皆さんも、学生や地域の方々から意見やアドバイスをもらい改善を重ねてきた。一日の上映作品の本数を見直すことで、映画のハシゴをされる常連さんも少しずつ増えている。今では遠方から来た人のために食事処マップを用意しているので、観賞後は近所の定食屋で食事をして、天気の良い日は川沿いの遊歩道をぶらぶら散策して腹ごなしするのも良いではないか。何かのついでの映画ではなく、良い映画に出会った時こそ街を回遊して余韻に浸る…そんな贅沢な映画の観方を是非ここで味わってもらいたい。


出典:映画館専門サイト「港町キネマ通り」
取材:2018年1月

語り手:大屋尚浩

平成12年から始めた映画館専門サイト「港町キネマ通り」にて全国の映画館を紹介している。自ら現地に赴き、取材から制作まで全て単独で行う傍ら、平行して日本映画専門サイト「日本映画劇場」も運営する。

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語り手:大屋尚浩

平成12年から始めた映画館専門サイト「港町キネマ通り」にて全国の映画館を紹介している。自ら現地に赴き、取材から制作まで全て単独で行う傍ら、平行して日本映画専門サイト「日本映画劇場」も運営する。

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