薔薇をモチーフとした外観が目印の映画館
2018年10月17日
シネ・ヌーヴォ(大阪府)
【住所】大阪府大阪市西区九条1-20-24
【電話】06-6582-1420
【座席】69席
自分たちで映画を上映していく砦のような場所を作りたかった…当時、月刊の映画情報紙「映画新聞」を発行していた景山理さんが、ミニシアターが関西に少ないことから上映されない映画があることに危機感を感じ、同紙で「映画館を作ろう!」と広く呼び掛けたところ、たくさんの賛同を得ることになった。その出資をもとに、九条で閉館していた映画館を借り受け、維新派の協力を得て、新しく映画館が誕生することになった。遠くからでも目を引く大きなバラをモチーフとした劇場外観と、天井を水面に見立て水中の映画館という非日常がコンセプトのアールヌーボー調の館内は、それまで観客が抱いていた映画館の概念を完全に覆した。以来、大手メジャー系では上映される機会が少ない国内外の優れた作品を中心としながら、過去の名作を集めた大回顧展と称した特集上映を二本柱として関西のミニシアターを常にリードし続けてきた。
今ではすっかり名物となった大回顧展では、可能な限り現存する作品を探し集める徹底したこだわりで、20枚限定のフリーパス券(2万円前後)は、毎回完売してしまう根強い人気を誇る。全作品に足を運ばれて、自然と仲良くなったお客様同士が、待ち時間にロビーで映画談義が始めるなんて日常茶飯事。リアルタイムで観ていた年輩の常連さんが、初めて観る若いお客さんに当時の話をする光景もよく見かける。毎日通うお客さんと顔見知りになったスタッフも「いらっしゃいませ」ではなく、「こんにちは」という挨拶から一日が始まるという。
2006年には、2階の事務所を改装して屋根裏の隠れ処のような30席ほどの「シネ・ヌーヴォX」をオープンした。未知なる映画との出会いをコンセプトに、もっと手軽に映画を楽しめるよう、学生たちが自主映画を発表できる場となっている。「本当に観たい映画を、いい環境の中で観る」というのが、年間300本近くの映画を上映している「シネ・ヌーヴォ」の基本理念。映画の上映だけではなく、イベントやトークショー、ゲストを招いてのサイン会など、多角的に映画に触れる場を提供し続けている。ロビーの壁一面にはもう書くスペースが無いほど、来館された映画監督や関係者のサインで埋め尽くされているのは、ここがただ映画を観るためだけの場所ではなく、コミュニケーションの場である証しなのだ。
出典:映画館専門サイト「港町キネマ通り」
取材:2013年8月
語り手:大屋尚浩
平成12年から始めた映画館専門サイト「港町キネマ通り」にて全国の映画館を紹介している。自ら現地に赴き、取材から制作まで全て単独で行う傍ら、平行して日本映画専門サイト「日本映画劇場」も運営する。
語り手:大屋尚浩
平成12年から始めた映画館専門サイト「港町キネマ通り」にて全国の映画館を紹介している。自ら現地に赴き、取材から制作まで全て単独で行う傍ら、平行して日本映画専門サイト「日本映画劇場」も運営する。
大阪市西区に今でもディープな昭和の風情が味わえる九条という街がある。駅前から真っ直ぐ伸びるアーケード商店街は昔ながらの店が建ち並び、日が暮れて、ポツポツと飲み屋にあかりが灯ると、昼間とは違った趣きのある一面が現れる。戦後の大阪が今も手つかずで残っている街の一角に、関西のミニシアターをリードしてきた老舗映画館「シネ・ヌーヴォ」がある。市川準監督の『東京夜曲』でオープンしたのは1997年。まだ西日本に数えるほどしかミニシアターが無かった時代だ。