岐阜新聞 映画部

映画にまつわるエトセトラ

Rare film pickup

いい映画はいいシナリオから。足立紳さん最新作

2023年03月23日

いまや売れっ子脚本家、足立紳さん

©2022「雑魚どもよ、大志を抱け!」製作委員会

映画の評価は監督で語られることが多いが、日本映画の父・牧野省三の至言「1 スジ(脚本)、2 ヌケ(撮影)、3 ドウサ(演技)」や、脚本家としても名高い名匠ビリー・ワイルダー監督の「映画の8割は脚本で決まる」とあるように、「ダメな脚本からはダメな映画しかできない。いい脚本からはいい映画とダメな映画ができる」と言われている。脚本は映画の設計図であり、肝なのである。

例えば日本映画の巨匠・小津安二郎監督には野田高梧、溝口健二監督には依田義賢という脚本家があってこそだし、全盛期の黒澤明監督は、橋本忍・菊島隆三・小国英雄などの超一流の脚本家たちと共同で物語を構成し、『生きる』、『七人の侍』、『用心棒』など世界的な傑作を連発した。

私が脚本家を意識しだしたのは、1976年2月からNHKで放映された『山田太一シリーズ・男たちの旅路』の山田太一さんだ。私が大好きだった水谷豊さん出演とあってリアルタイムで観たのだが、世代間の考え方や価値観の違いを浮き彫りにした骨太なテーマと、無駄が無くリズミカルなセリフでのディスカッションドラマは、「これぞ私が求めていたドラマだ!」と高校生だった私に深い感銘をもたらした。

当時脚本家が冠になったシリーズは珍しく、それ以降"山田太一ドラマ"を追いかけていった。『岸辺のアルバム』、『早春スケッチブック』、『ふぞろいの林檎たち』・・本当に素晴らしいドラマである。

同じ頃から活躍し始めた『前略おふくろ様』、『北の国から』などの倉本聰さんや、『寺内貫太郎一家』、『阿修羅のごとく』などの向田邦子さんたちと共に、脚本家の知名度をあげていった当時の脚本家御三家だ。

『雑魚どもよ、大志を抱け!』でCINEX映画塾2度目の登場の足立紳さんは、岐阜新聞映画ライターで選ぶ脚本賞では、『百円の恋』(2014)と『アンダードッグ』(2020)で2度受賞している私も大好きな脚本家だ。

足立さんが描く人物は、情けなくて弱虫で、ちょっと強がってはみても基本的には逃げ腰で、奥さんには頭があがらない。でも結構諦めない方で、人当たりもいい。描く物語は理屈っぽくなく、ウェルメードで心地よい。私にとって、いまは今泉力哉さんと足立紳さんが私のココロをざわつかせてくれる二大脚本家である。

足立さん執筆のNHK朝ドラ『ブギウギ』が秋から始まる。奥さんに褒めてもらえることを祈ってます。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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