岐阜新聞 映画部

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映画塾で語った深田晃司監督待望の新作!

2018年07月30日

海を駆ける

©2018"The Man from the Sea"FILM PARTNERS

【出演】ディーン・フジオカ、太賀、阿部純子、アディパティ・ドルケン、セカール・サリ、鶴田真由
【監督・脚本】深田晃司

美しい南国の海を背景にしたファンタジー

 海から男がやって来る。“駆ける”という疾走感はなく、男は美しい海に現れた異物のように、砂浜に打ち上げられ横たわる。

 貴子(鶴田真由)はインドネシア・スマトラ島のアチェで、災害復興のNPO法人を息子のタカシ(太賀)と運営している。この日はテレビの取材で、日本占領下のことを知る住民にインタビューをしていた。インドネシアは大戦後、ふたたび植民地化に乗り出した旧統治国のオランダと独立戦争を戦っている。これには敗戦国の日本が少なからず関わっており、武器の供与や未帰国兵の戦闘参加もあった。現地の人が唄う日本語の歌は、不思議な郷愁を感じさせるが、反日の気持ちを隠そうとしない人もいる。別のつながりで言えば、インドネシアは2004年12月にスマトラ沖地震による津波で甚大な被害を受けており、東日本大震災による津波とも無縁ではない。

 貴子たちは海岸に打ち上げられた謎の日本人の世話をすることになるが、そこには日本から来た、少しワケありの親戚サチコ(阿部純子)が加わる。男は記憶喪失で身元はよくわからないまま、自らは言葉も発しようとしないが、インドネシア語も日本語も理解しているような素振りは見せる。突然、“ホーミー”のような“喉歌”を唄う。すると捕獲した籠ざるの中の魚が、息を吹き返したように飛び跳ね出す。また、倒れて苦しむ少女を手品のような手段で助けたりする。時空を超えた移動も自在にこなし、熱病にうなされたサチコの夢の中へも介入する。

 日本の原宗教には“来訪神”という考え方がある。外からやって来て、豊穣や幸福をもたらす人=神の事を言い、仮面や変装で異形の姿を見せ、祭りなどに登場するのがそのかたちとなる。インドネシアなどの南方由来の説もあるから、ここにも繋がりを見ることができる。映画は謎の男をそういう神に見立てたファンタジーなのか? 不明な部分が多く消化不良のまま海を駆けても、爽快感は皆無なのが残念!

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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