岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

ギャンブルに狂う人間性の考察

2018年06月24日

モリーズ・ゲーム

©2017 MG's Game, Inc. ALL RIGHTS RESERVED.

【出演】ジェシカ・チャステイン、イドリス・エルバ、ケヴィン・コスナー
【監督・脚本】アーロン・ソーキン

モリーの波乱万丈の人生は他人事でない?

 監督アーロン・ソーキンは現代米国映画界ナンバーワンの脚本家。『ソーシャル・ネットワーク』と『スティーブ・ジョブズ』などが代表作。本作もセリフの洪水で字幕を追うのが大変。最も感心したのは緻密な編集ぶりで、近年随一。3人の編集者の苦労がしのばれる。ポーカーの手を画面で解説する箇所もあり、分かりやすい。

 冬季オリンピックの米国代表入りを目指していた文武両道のモリーは、ひょんなことからロサンゼルスの高級ポーカーゲームの事務局のような立場となる。上司との対立から自分でゲームを主催することを決断、すべてが始まる。手数料さえ取らなければゲームの主催は連邦法に抵触しないが、それがいつまでも続くはずがない。

 逆境を次々と跳ね除けていくモリーをジェシカ・チャステインが魅力的に演じる。最近では冷徹なロビイスト役の『女神の見えざる手』も良かったし、たたき上げのCIAエージェントを演じた『ゼロ・ダーク・サーティ』も印象に残る。

 黒人弁護士の娘が課題図書として読む「るつぼ」がこの映画を読み解く1つのヒント。『クルーシブル』のタイトルで映画化もされている。アーサー・ミラーの戯曲は魔女裁判を題材としているが、モリーの行ったことも裁判で断罪するに値するかと問うている。現実にはどうなったか。彼女の波乱万丈の人生を垣間見るのと同時に、現代のアメリカ社会も俯瞰できる。一人の人生を通じてその人が生きた時代を振り返る。この映画を観る時間はソーキンの手腕を味わう至福の時だ。

語り手:シネマトグラフ

外資系資産運用会社に勤務。古今東西の新旧名画を追いかけている。トリュフォー、リヴェット、ロメールなどのフランス映画が好み。日本映画では溝口と成瀬。タイムスリップして彼らの消失したフィルムを全て見たい。

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語り手:シネマトグラフ

外資系資産運用会社に勤務。古今東西の新旧名画を追いかけている。トリュフォー、リヴェット、ロメールなどのフランス映画が好み。日本映画では溝口と成瀬。タイムスリップして彼らの消失したフィルムを全て見たい。

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