岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

良いストーリーと緩急のあるテンポで描く痛快娯楽映画

2018年06月17日

ダンガル きっと、つよくなる

©Aamir Khan Productions Private Limited and UTV Software Communications Limited 2016

【出演】アミール・カーン、ファーティマー・サナー・シャイク、サニャー・マルホートラ、サークシー・タンワル、アパルシャクティ・クラーナー
【監督・脚本】ニテーシュ・ティワーリー

なぜ勝てるのか、素人にも優しい描き方

 2016年のリオ五輪で、インド女子レスリング界初の銅メダルに輝いたマリクは、この映画の主人公であるギータ(姉)を国内予選で破っての出場であった。ギータは2012年のロンドン五輪でインド初の女子選手として出場を果たし、バビータ(妹)もメダル獲得こそならなかったがリオ五輪のマットの上に立っている。

 本作は、インドを代表する俳優で、主演映画が立て続けに大ヒットしているアーミル・カーンが実在のレスリング鬼コーチ・鬼父を演じ、またもや大ヒットとなった実話ベースの痛快娯楽映画である。インド映画のお約束事、歌に合わせて感情や状況を伝えるシーンはもちろん素晴らしく、スパルタ教育の特訓シーンなどはダンスの代わりとなっており、キチンとツボを押さえている。

 全体はスポ根映画の王道をひたすら歩んでいく。親が叶わなかった夢を子どもに押し付け、甘い物は禁止し、髪は無理やり短くさせ、走り込みを強制し、思春期を犠牲にさせるなど、一歩間違えば「歪んだ父の愛」となってしまうが、特別な才能を持った彼女たちが、段々と力を付けていき自信を持っていく姿を見ると、一流になるには不断なる努力が必要なのだと、不思議と素直に納得させられる。

 根性論や精神論は薄く、技術論や方法論が強調されている描き方なので、闘いのシーンに説得力があり、なぜ勝てるのかが素人でも理解できる。二歩進んで一歩下がり、次は三歩進むというストーリーの流れと、程よい緩急のあるテンポで、退屈なシーンがほとんどない。

 男性優位の世の中で、女性がチャンスを切り開く。きっかけは無理やりでも、少し辛抱してそれを面白がり、次第に自分の意志で闘うようになって、最後は自分の判断で攻撃し勝利を掴み取る。父からの自立の物語であるが、自立するためには自分ひとりで頑張ったわけではなく、色んな人に助けられたからこそ自立できたのだとの思いが伝わるご機嫌な娯楽作だ。


『ダンガル きっと、つよくなる』は岐阜CINEXほか、全国で公開中。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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