震災を乗り越えて
街に再び映画の灯を取り戻す
2017年12月13日
十日町シネマパラダイス(新潟県)
【住所】新潟県十日町市本町6-1
【TEL】025-752-7505
【座席】126席
今も記憶に残る13年前に発生した中越地震は、ここに暮らす人々の日常を一変させてしまった。街にあった唯一の映画館も被災して、とうとう再開することは無かった。このままでは街から映画を観る文化が消えてしまう…と、市内で着物関連の事業をしていた岡元真弓さんが、資財を投げ打って立ち上げたのが「十日町シネマパラダイス」だ。全くの素人だった岡元さんだが、その意思に賛同した東京の老舗ミニシアターが配給会社の紹介や運営のノウハウ…そして場内の設備に至るまで全面的に協力してくれた。おかげで、舞台挨拶に訪れた監督からお墨付きをもらえるほど最高の音響が実現している。館名の由来となったのは勿論、あの名作『ニュー・シネマ・パラダイス』で、こけら落としで上映された。
ロビーにはフローリングの小上がりがあり、そこには映画館では珍しいグランドピアノが置いてある。ガラス面から入る自然光が心地良いこのスペースは、誰でも自由に利用出来るので、少し早めにチケットを購入して、ゆっくり本を読んだり、友人同士で映画談義に花を咲かせている。時には、ピアノを使ってプロの歌手を招いてのミニコンサートや、フリージャズを聴きながらワインとチーズを楽しむというライブイベントも開催されている。
取材が終わると、とっぷりと日も暮れて、電車まで時間があるので、映画館のスタッフさんに美味しい店を教えてもらった。そこは、駅前にある「志天」という焼き物が名物の居酒屋。十日町はブランド豚に力を入れており、モツがご自慢ということなので、迷わずオススメのモツ煮丼を頼む。丼いっぱいのご飯に、寸胴で煮込まれたモツ煮をたっぷりと盛る。その上に大きな焼き豆腐を乗せて、更に汁を豪快にかける。これにスープと小皿が付いて680円は安すぎる。冷え込んだ晩秋の夜…身も心もホクホクで中越の街を後にした。
出典:映画館専門サイト「港町キネマ通り」
取材:2017年11月
語り手:大屋尚浩
平成12年から始めた映画館専門サイト「港町キネマ通り」にて全国の映画館を紹介している。自ら現地に赴き、取材から制作まで全て単独で行う傍ら、平行して日本映画専門サイト「日本映画劇場」も運営する。
語り手:大屋尚浩
平成12年から始めた映画館専門サイト「港町キネマ通り」にて全国の映画館を紹介している。自ら現地に赴き、取材から制作まで全て単独で行う傍ら、平行して日本映画専門サイト「日本映画劇場」も運営する。
新潟県南部の山間にある十日町市は、日本有数の豪雪地帯であり、日本三大渓谷のひとつ清津峡や信濃川など豊かな自然に囲まれた小さな街だ。新潟市から晩秋の田園風景を楽しみたかったので、上越線から越後川口で飯山線に乗り換えて、2時間半掛かるローカル線を選ぶ。いくつものトンネルを抜けて、十日町盆地の雄大な景色が広がると間もなく十日町駅だ。駅前は思ったよりも開けており、数年前までシャッター通りだったという商店街も街を良くしようという若者たちの努力で新しいお店が増えているようだ。8年前には池内万作主演の『しゃったぁず・4』という商店街を舞台にした映画も作られている。