岐阜新聞 映画部

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会社の存亡か 報道の自由か

2018年06月02日

ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書

©Twentieth Century Fox Film Corporation and Storyteller Distribution Co., LLC.

【出演】メリル・ストリープ、トム・ハンクス、サラ・ポールソン、ボブ・オデンカーク、トレイシー・レッツ、ブラッドリー・ウィット・フォード、ブルース・グリーンウッド
【監督・製作】スティーヴン・スピルバーグ

人として守らなければならないもの

 『大統領の陰謀』(アラン・J・パクラ監督)は、ワシントン・ポストの記者カール・バーンスタインとボブ・ウッドワードが、ウォーターゲート事件の真相に迫り、ニクソン大統領を辞任に追い込んだ実話の映画化。カールはダスティン・ホフマン、ボブはロバート・レッドフォードが演じた。ふたりの若手記者をサポートするのが、ポスト紙の編集主幹ベン・ブラッドリー。この演技でジェイソン・ロバーズは最初のアカデミー助演男優賞を受賞した。

 『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』で、このベンを演じているのがトム・ハンクス。同じ人物をふたりの名優が演じているので、その比較だけでも面白い。映画のラスト、ウォーターゲート事件の発端が、ドキュメンタリーフィルムのように挿入されているから、この二本の映画は密接なつながりがある。

 はじまりは1966年のベトナム。国防省から派遣された調査員のような人物が、タイプライターを携帯して戦争の前線に向かい、ナマの戦況を克明にレポートする。帰国の機内で報告を受けるのがロバート・マクナマラで、彼はケネディ〜ジョンソン大統領時代に国防長官を務めた。この時、マクナマラは政治家の二枚舌を使う。これが内部告発の発端となるのだが…。

 時は過ぎ、71年。いきなり、ワシントン・ポスト紙の経営状態というシビアな話になる。夫の自殺により、やむなく社主となったキャサリン・グラハム(メリル・ストリープ)だったが、女性であることを揶揄され弱腰を指摘され、その立場は揺らいでいた。間近に迫った株式公開に絡んだ経営スタッフの突き上げ、銀行との駆け引き。これに編集現場の戦々恐々のやり取りを絡めて、ストーリーはスピーディに展開する。特に、報道の自由を守るため、紙上掲載を決断する電話会議は圧巻。政治圧力による恐怖はまだ薄く、スリラーとしては劣る分、キャサリンとマクナマラ、ベン夫妻とケネディ大統領との友情にまで言及する繊細な気配りが素晴らしい。このご時世、国の秘密には敏感になる。


『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』は岐阜CINEXほか、全国で公開中。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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