岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

夫婦の日常を捉えた、心温まるドキュメンタリー

2024年09月26日

エターナルメモリー

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【出演】パウリナ・ウルティア、アウグスト・ゴンゴラ
【監督】マイテ・アルベルディ

薄れゆく記憶と、忘れない記憶

1994年「国際アルツハイマー協会」はWHOと共同で毎年9月21日を「世界アルツハイマーデー」と制定し、この日を中心に認知症の啓発を実施している。日本では2024年1月に施行された「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」において、毎年9月21日を「認知症の日」、9月を「認知症月間」と定め、まさに当月より実施している。

私事ではあるが今年90歳になる私の母も認知症を発症し、今年3月より特養に入居しており全く他人事ではない。

本作は、60代でアルツハイマー症と診断されたジャーナリスト、アウグスト・ゴンゴラ(1952~2023)と、妻で文化大臣を務めたこともある女優のパウリナ・ウルティア(1969~)の夫婦の日常を捉えた、心温まるドキュメンタリーである。アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞にノミネートされたが、惜しくも受賞を逸した。ちなみに受賞作は『マリウポリの20日間』だった。

パウリナはアウグストを介護などしていない。自分の演劇の公演や練習に積極的に連れ出し、社会と関わり合いながらすごしている。アウグストはときにおかしな行動もするが、周りも自然に受け入れている。

その合間に、2人が若かったころの屈託ない様子の記録映像が挟み込まれる。お互いを尊重しリスペクトしていたからこそ、一方が認知症になっても支えていけるのだ。美しくもあり羨ましくもある。

しかしアウグストが、鏡に写った自分の姿を他人だと勘違いして話しかけたり、妻のパウリナのことが分からなくなってくる様子も、カメラはそのまま捉えていく。

段々忘れていく記憶であるが、軍事独裁政権下に反ピノチェト側のジャーナリストとして活躍した記憶は「大勢の人が殺されて苦しみを味わった」と忘れることはない。

認知症が進み「ひとりぼっちだ。バカにされている」という彼の叫びは悲痛であるが、怒ってはならない。愛に溢れた映画である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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