岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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山本周五郎原作、小林正樹監督の傑作人情話

2024年09月21日

いのち・ぼうにふろう

【出演】仲代達矢、中村翫右衛門、酒井和歌子、栗原小巻、佐藤慶、勝新太郎、近藤洋介、山本圭
【監督】小林正樹

縁もゆかりもねえ青年のために「いのちぼうにふろう」

本作の原作は山本周五郎(1903~1967)の『深川安楽亭』(1957/小説新潮)である。

山本周五郎は、市井に生きる庶民や名も無き流れ者に寄り添い、その喜びや悲しみ怒りや共感を、巧みなストーリーと鋭い心理描写で描く日本を代表する作家だ。映画化された作品も多く、黒澤明監督の『椿三十郎』(1962/キネ旬5位/原作「日々平安」)、『赤ひげ』(1965/キネ旬1位/原作「赤ひげ診療譚」)、『どですかでん』(1970/キネ旬3位/原作「季節のない街」)をはじめ、錚々たる監督が手がけている。

『いのちぼうにふろう』(1971/キネ旬5位)の監督は、小林正樹監督(1916~1996)である。女優の田中絹代さんの又従弟で、木下惠介監督の愛弟子(11作品でチーフ助監督)。代表作は『人間の條件』(1959~1961/キネ旬5位・10位・4位)、『切腹』(1962/キネ旬3位)、『怪談』(1964/2位)、『上意討ち 拝領妻始末』(1967/キネ旬1位)、『東京裁判』(1983/キネ旬4位)などで、生涯で22本を監督、うち11本がキネマ旬報のベストテン入りをしている大監督だ。

同時代に活躍した巨匠で、「四騎の会」という製作グループを結成した黒澤明、木下惠介、市川崑らに比べると取り上げられることが少ないが、間違いなく凄い監督であり、はじめてロイヤル劇場で観た『いのちぼうにふろう』も、現代に通じる傑作であった。

江戸深川の中洲にある一種の治外法権の食事処「安楽亭」が舞台で、そこの主人幾造(中村翫右衛門)の下に集う、定七(仲代達也)をはじめとするならず者たちが主役だ。みんな悲しい過去を背負っている。

そんな奴らが、縁もゆかりもねえ青年のために「いのちぼうにふって」金の工面をする。自分の利を得ることも恩着せがましさもなく、「俺たちの二の舞にはなるな」の一心だ。実にカッコいい人情話である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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