岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

禁断の愛情、フランスの今を見据えた映画

2024年09月21日

クレオの夏休み

Ⓒ2023 LILIES FILMS

【出演】ルイーズ・モーロワ=パンザニ、イルサ・モレノ・ゼーゴ
【監督】マリー・アマシュケリ

監督の分身ともいえるクレオ

本作の主人公6歳のクレオ(ルイーズ・モーロワ=パンザニ)の母親代わりになるのが、ナニーのグロリア(イルサ・モレノ・ゼーゴ)である。

日本では馴染みのないナニーという職業であるがネットで調べてみると、「家庭訪問型の保育のプロフェッショナル。子どもの教育や成長に踏み込んだ形で継続的に関わっていく。依頼主の家庭に住み込みで働く場合もあり、第二の母親のような立場」であるそうだ。

『クレオの夏休み』は、マリー・アマシュケリ監督の実体験を基に作られているが、インタビューによると「フランスではナニーの文化が主流だが、祖国に子どもを置いて出稼ぎに来る人も多い。ナニーがいる家庭の子どもは、自分の母親でない人に母親と同じような愛情を抱くこともある」そうで、その禁断の愛を描くのが映画の大きなテーマとなっている。

映画は監督の分身ともいえるクレオの目線で描かれていく。カメラはクレオの一挙手一投足を常に追っていくので画面に映る範囲は狭い。子どもの目から見た視野を表しているようだ。セリフは少なく、その表情の一つ一つがセリフの代わりになっている。

母親のいないクレオにとって、グロリアは母親そのものだ。肌の色など関係ない。そんな蜜月の世界は突然終了を迎える。グロリアの母が亡くなり、故郷であるアフリカ北西沖に浮かぶ島国ガーボベルデに帰ることになったのだ。「祖国に子どもを残してきた」という事情を知らないクレオにとっては、いなくなる淋しさしか理解できないのだ。

念願かなってガーボベルデにいるグロリアの処に、夏休みを使って会いに行くクレオ。クレオは、グロリアの子どもたちと一緒に過ごすことになる。母親のいないクレオにとってグロリアは母親そのものだったが、実の子どもたちにとってはその間母親不在だったわけで、かつての植民地との関係や格差社会の現実が浮き彫りとなってくる。

フランスの今を見据えた映画である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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