岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

デビュー作から並みの監督でないことはよくわかる

2024年09月13日

幻の光

© 1995 TV MAN UNION

【出演】江角マキコ、浅野忠信、柏山剛毅、渡辺奈臣、吉野紗香、木内みどり、大杉漣、桜むつ子、赤井英和、市田ひろみ、寺田農、内藤剛志、柄本明
【監督】是枝裕和

映画を観て、輪島を支援しよう

岐阜新聞映画部の活動は本年9月末をもって終了するが、是枝裕和監督の作品は、『海よりもまだ深く』(2016)、『万引き家族』(2018)、『真実』(2019)、『怪物』(2023)がCINEXで上映されている。残念ながら映画塾での来岐はかなわなかったが、名実共に現代日本の最高峰の監督である。

是枝監督の長編デビュー作は『幻の光』である。1995年12月渋谷に開業したシネ・アミューズのオープニング作品で、名古屋では翌年2月にシネマスコーレで上映され、私もこの時に観ている。すでに1995年9月にはヴェネツィア映画祭で“金のオゼッラ賞(撮影賞)=中堀正夫”を受賞しており、映画マニア的には鳴り物入りの期待作であった。キネ旬では4位に選ばれている。

それ以来29年ぶりに劇場で観たが、ほぼ初見のような新鮮さの中、これがデビュー作だった主演の江角マキコさんを夫役の内藤剛志さんが全裸で後ろから抱きしめているシーンと、“おもちゃのチャチャチャ”のフレーズは未だに覚えていた。

デビュー作から並みの監督でないことはよくわかるが、顕著なのは引きのカットが多用されていることだ。俯瞰の構図が多く、そのうえ長回しである。風景アートのような美しいシーンと、シンメトリックを意識したショットも多用され、さすがヴェネツィアの撮影賞を撮っただけのことはある。のちの是枝作品にそのまま継承されていないが、表現方法の原点がわかる。遠景のときにも声が近くに聞こえてくるのは映画的処理であって、私には違和感はない。

ロケーションが素晴らしく、子ども時代を過ごした尼崎のガード下の様子も素晴らしいが、何と言っても能登と輪島の風景だ。朝市の活気は映画から伝わってくるし、子どもたちが追いかけっこをする棚田やのどかな港の情景、絵画のような海沿いの光景からは、能登の人たちの息遣いが聞こえてくる。

映画を観て、輪島を支援しよう。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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