岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品愛に乱暴 B! 真面目に生きてきた女性が壊れる 2024年09月06日 愛に乱暴 ©2013 吉田修一/新潮社 ©2024 「愛に乱暴」製作委員会 【出演】江口のりこ、小泉孝太郎、馬場ふみか、水間ロン、青木柚、斉藤陽一郎、梅沢昌代、西本竜樹、堀井新太、岩瀬亮/風吹ジュン 【監督・脚本】森ガキ侑大 周囲を気にしないで生きることの困難 ひとりで生きることの辛さ 初瀬桃子は精一杯生きている。 桃子は真守と結婚して8年。真守の実家の敷地内にある別棟で夫婦水入らずで生活しているが、隣の母屋には真守の母、姑の照子がひとり住んでいる。ゴミ出しには声掛けをして姑の分まで運び出すのが日課となっている。それなりに良好な嫁姑関係。 ゴミ捨て場ではボヤ事件が頻発するようになる。 桃子は天然石鹸の教室で講師をつとめている。かつて勤務していた会社の関連する社外セミナーで、評判も上々と自負している。 会社からはアッサリと打切りの報告がある。 それなりの会話がある夫婦。ゴミ捨て場の不審火のことや、街で見かけて買ってしまったカップ&ソーサーのことを話題にする。返事は返って来るがどことなく空々しい物足りない噛み合わない。 夫婦は妊活に励んだ時もあった。 ある日、桃子は真守から浮気を告白され、相手であるふみかを紹介され、離婚を懇願される。ダメ押しは、ふみかが既に妊っていることだった。 桃子は壊れはじめる。 原作は近年、映画化作品が続く芥川賞作家・吉田修一の同名小説で、人の抱える闇と不穏な揺らぎをあぶり出す。 物語は、ほぼ桃子の視点で進行する。周りに気を遣い、配慮を怠らない自負とは裏腹に、空気を読みきれていない空回りの気質が共存するという矛盾が醸し出す桃子の日常は、ふとした瞬間にリアルから不条理な世界へと移行する。 姑から渡される真守の好きな魚は、丸ごと大量。抱えた西瓜は妊娠で膨らんだお腹に見える。行方不明の愛猫の鳴き声の幻聴。チェーンソー…さり気なく、あるいは大胆に登場する小道具の数々が、ことごとく意味深なのが怖い。 監督は長編3作目となる森ガキ侑大で、脚色(共同)段階からよく練られた仕事だと感じさせる。 桃子を演じるのは江口のりこで、難解に流されやすい役柄を、繊細な体現を交え、心理の変化の揺らぎを巧みに表現している。桃子は江口のりこ以外に考えられない圧倒的な存在感である。 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 100% 観たい! (6)検討する (0) 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 2024年09月06日 / 幸せのイタリアーノ 嘘からはじまるロマンチックコメディ 2024年09月06日 / 愛に乱暴 人間の我慢の限界を描き、本質に迫った映画 2024年09月06日 / 水深ゼロメートルから 何かをしたい4人の女子高生の青春 more 2019年09月18日 / テアトル蒲田/蒲田宝塚 キネマの天地にある映画館は街の人々を笑顔にする 2021年09月08日 / 【思い出の映画館】浅草東宝(東京都) 大晦日は浅草寺に詣でてオールナイトで年を越す 2023年06月28日 / 神戸映画資料館(兵庫県) 長年眠っていた貴重なフィルム作品を発掘・上映する。 more
周囲を気にしないで生きることの困難 ひとりで生きることの辛さ
初瀬桃子は精一杯生きている。
桃子は真守と結婚して8年。真守の実家の敷地内にある別棟で夫婦水入らずで生活しているが、隣の母屋には真守の母、姑の照子がひとり住んでいる。ゴミ出しには声掛けをして姑の分まで運び出すのが日課となっている。それなりに良好な嫁姑関係。
ゴミ捨て場ではボヤ事件が頻発するようになる。
桃子は天然石鹸の教室で講師をつとめている。かつて勤務していた会社の関連する社外セミナーで、評判も上々と自負している。
会社からはアッサリと打切りの報告がある。
それなりの会話がある夫婦。ゴミ捨て場の不審火のことや、街で見かけて買ってしまったカップ&ソーサーのことを話題にする。返事は返って来るがどことなく空々しい物足りない噛み合わない。
夫婦は妊活に励んだ時もあった。
ある日、桃子は真守から浮気を告白され、相手であるふみかを紹介され、離婚を懇願される。ダメ押しは、ふみかが既に妊っていることだった。
桃子は壊れはじめる。
原作は近年、映画化作品が続く芥川賞作家・吉田修一の同名小説で、人の抱える闇と不穏な揺らぎをあぶり出す。
物語は、ほぼ桃子の視点で進行する。周りに気を遣い、配慮を怠らない自負とは裏腹に、空気を読みきれていない空回りの気質が共存するという矛盾が醸し出す桃子の日常は、ふとした瞬間にリアルから不条理な世界へと移行する。
姑から渡される真守の好きな魚は、丸ごと大量。抱えた西瓜は妊娠で膨らんだお腹に見える。行方不明の愛猫の鳴き声の幻聴。チェーンソー…さり気なく、あるいは大胆に登場する小道具の数々が、ことごとく意味深なのが怖い。
監督は長編3作目となる森ガキ侑大で、脚色(共同)段階からよく練られた仕事だと感じさせる。
桃子を演じるのは江口のりこで、難解に流されやすい役柄を、繊細な体現を交え、心理の変化の揺らぎを巧みに表現している。桃子は江口のりこ以外に考えられない圧倒的な存在感である。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。