岐阜新聞 映画部

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歯に衣着せぬ物言いの「愛子節」が全開の痛快コメディ

2024年08月26日

九十歳。何がめでたい

Ⓒ2024映画「九十歳。何がめでたい」製作委員会 Ⓒ佐藤愛子/小学館

【出演】草笛光子、唐沢寿明/藤間爽子、片岡千之助、中島瑠菜、オダギリジョー、清水ミチコ、LiLiCo、宮野真守、石田ひかり、三谷幸喜、木村多江、真矢ミキ
【監督】前田哲

「いい爺さん」になるのでなく、「面白い爺さんになれ」

2021年に99歳で亡くなった瀬戸内寂聴さんは、1922(大正11)年生まれ。本作の主人公である佐藤愛子さんは、翌1923(大正12)年生まれのちょうど100歳だ。お二人とも人生の達人であり、平和を愛する憧れのインテリゲンチャである。

佐藤さんが2018年に出版したベストセラーエッセイ「九十歳。何がめでたい」(小学館)を映画化した本作は、歯に衣着せぬ物言いの「愛子節」が全開の痛快コメディである。

断筆宣言をした愛子先生(草笛光子)と、ちょっと古い価値観の中年編集者・吉川(唐沢寿明)の漫才コンビのようなやりとりは、お互いをリスペクトしていて気持ちがいい。

連載依頼を持ちかけられた愛子先生が「書けない、書かない、書きたくない!」と何度も断るものの、そんなことではへこたれない吉川は、先生の大好きな菓子折り片手に何度も家まで訪れる。

愛子先生がいくら断筆宣言をしても、先生の机を見れば「作家」であることに間違いない。机の上はいつでも書ける状態が保たれているのだ。

「亀の甲より年の功」、年長者には若者には及ばない知恵や技能がある。編集者・吉川には、先生の辛口エッセイは絶対ウケるとの確信があったのだろう。迎合的な時代の「進歩」を怒り、悩める若者を叱る。ものわかりの「いい爺さん」になるのでなく、人生を楽しむ「面白い爺さんになれ」。

主演の草笛光子さんは、1933(昭和8)年生まれの90歳。美しさは相変わらずで、愛子先生への「人生で一番大切なことを一言でズバリとお願いします」との訳知り顔の質問に、ひとこと「知らん!」と答えるところなど、生き生きと演じている。

嬉しいのは大ヒットしている事だ。シニア層を中心に圧倒的な支持を集め、すでに動員80万人、興行収入10億円突破。90歳主演女優の映画としては史上初だそう。

この映画を観ていると、長生きしたくなってくること間違いない。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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