岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

壮絶なののしり合いが展開するワンシチュエーションコメディ

2024年08月22日

お母さんが一緒

©2024松竹ブロードキャスティング

【出演】江口のりこ、内田慈、古川琴音、青山フォール勝ち(ネルソンズ)
【監督・脚色】橋口亮輔

長回しとクローズアップで臨場感たっぷり

橋口亮輔監督は、1993年に『二十才の微熱』(キネ旬30位)で長編デビューして以降、本作を含めて長編は6本という大変寡作な監督である。2本目以降の作品は『渚のシンドバッド』(1995/10位)、『ハッシュ!』(2002/2位)、『ぐるりのこと。』(2008/2位)、『恋人たち』(2015/1位)と数年おきだが、すべてがキネ旬ベストテンにランキングされるという大監督だ。

木下惠介監督をリスペクトする橋口監督の映画は、日常のなかから紡ぎだされる細やかな希望やどうしよもない葛藤、市井の人々の優しさや哀しみをユーモアを交えて描く、木下監督の精神を受け継いだかのような作風だ。

さらにゲイをはじめとするLGBTQやマイノリティに寄り添った映画が多く、弱者目線で描かれているのも特徴だ。

『お母さんが一緒!』は、お母さんの誕生日祝いを名目に、高級そうな温泉旅館にやってきた、長女・弥生(江口のりこ)、二女・愛美(内田慈)、三女・清美(古川琴音)の壮絶なののしり合いが展開する、ワンナイト・ワンシチュエーションコメディである。

招かれたお母さんはほぼ出てこないが、わがままで遠慮が無くて文句ばかりの人のようで、三姉妹とも持て余し気味だ。お母さんの娘たちの育て方は、それぞれの欠点についてズケズケ言ってしまうタイプで、娘が傷つくことなど意に介してない。というのが三姉妹の口喧嘩からわかってくる。

  長女・弥生は「私だけ名前に美が入ってない」と嘆いたり、お母さんに渡すプレゼントで言い争ったりののしり合いは段々エスカレートしてきて、三女・清美の恋人・タカヒロ(青山フォール勝ち)が現れるに至ってバトルは頂点に達してくる。

橋口監督は、聞くに堪えない、笑うに笑えない壮絶な修羅場を、一瞬たりとも見逃すまいと、長回しとクローズアップで臨場感たっぷりに現場を写し取っていく。とってもユニークな会話劇である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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