血を流す子どもを運ぶ無傷な男たち 手前味噌の言い分を疑わない視野狭窄の政治家

無関心ではなかった人たちのはなし。

1938年、第二次世界大戦開戦直前。オーストリアを占領したナチスドイツは、隣国チェコスロバキアにその毒牙を向けようとしていた。

チェコスロバキアは、簡単に言うと、チェコとスロバキアが合併した国なのだが、他の東ヨーロッパの国々がそうであるように、いくつもの民族が複雑に絡む地域で、チェコスロバキアは時代の変換でその時々に国の姿を変えざるを得なかった。

ナチスはズデーテン地方を要求、戦争を避けるための手段として、国境を放棄させられた。それは影響を持っていたとはいえ、イギリス、フランスなどの他国の都合であった。

チェコスロバキアは解体され分断され、ナチスの侵攻による迫害から逃れた多くのユダヤ人たちが、一気にプラハへ逃れて来る。

イギリス、ロンドン。株の仲買人として働いているニコラス・ウィントンは、友人のマーティンからプラハで起こっていること、ユダヤ人難民のことを聞かされる。

その話に触発されたニコラスは、何かできることがあるのではという強い思いに駆られ、母べペットの反対をはねのけプラハ行きを決行。そこでニコラスが見たものは、飢えと寒さに震える大勢の子どもたちの悲惨な姿だった。

決断は素早い行動にかわる。難民家族のリスト作成から、子どもたちを選抜し、イギリスへ避難させる方針を決める。ビザ、医療証明書、保証金、それを受入れる里親の確保。その資金を集めるため、ニコラスはロンドンへ戻り、役人を動かし、マスコミを活用して、2週間後には子どもたちを乗せた第1便 の列車がリバプールに到着する。

それから第8便まで、669人の子どもたちを脱出させるのに成功したが、戦争が勃発し、次の列車が到着することはなかった。

それから50年後、救えなかった子どものことを忘れられないニコラスのもとにある連絡が入る。

シンドラー、杉原千畝、ユダヤ人を救ったもうひとつ実話。尊い行動が繋いだ命が見えるラストは、分かっていても感動的だ。