岐阜新聞 映画部

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Meet somewhere

天才が天才をリスペクトする人間ドキュメンタリー

2024年08月01日

アンゼルム “傷ついた世界”の芸術家

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【出演】アンゼルム・キーファー、ダニエル・キーファー、アントン・ヴェンダース
【監督】ヴィム・ヴェンダース

タブーに挑戦し続けるアンゼルム・キーファー

本作は、戦後ドイツを代表する映画監督のヴィム・ヴェンダースが、戦後ドイツ最大の芸術家で新表現主義を象徴するアンゼルム・キーファーの生涯とその現在を追った、天才が天才をリスペクトする人間ドキュメンタリーである。

2人は共に第2次世界大戦が終結した1945年生まれの79歳で、30数年来の旧知の仲だ。

アンゼルム・キーファーは、ナチスや戦争というドイツの負の歴史や神話などを題材に、絵画だけでなく写真や彫刻、建築、巨大オブジェなどの多彩な表現で作品を発表し続けている。

1969年には、ナチスの暗い歴史から目を背けようとする世論に挑戦するかのような写真シリーズ「占領」を発表、ヨーロッパ各所でナチ式に敬礼する自身の姿を撮影したそのポートレートは激しく物議をかもした。その後もナチスの無謀なイギリス侵略計画を取り上げた「あしか作戦」(1975)などで、ドイツの歴史上のタブーを掘り起こし続けている。

そんな姿勢がドイツでは嫌われたのか、1991年にベルリンのナショナルギャラリーで開催された自身の大きな展覧会は失敗に終わる。この少し前にアメリカで開催された展覧会では「コンテンポラリーアーティストの中で、もっとも偉大な作家のひとりである」と評価されたのにも関わらず、ドイツでは拒絶されたのだ。それもあって1992年、キーファーはフランスに拠点を移している。

映画は南仏ヴァルジャックの広大なアトリエを映し出していく。わらをキャンバスに付着させた絵画シリーズや、鉛を素材に使った物質感のある巨大なオブジェなど、その創造力に限界はない。テーマも宗教や宇宙にまで広がりを見せていく。

ヴェンダースはそれに答えるように、純ドキュメンタリーでなく、キーファーの子ども時代や青年期のフィクションを挿入し、彼の精神面も暗示していく。

ヴェンダースとキーファーの2人の巨人の活動には、ますます目が離せない。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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