岐阜新聞 映画部

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ヤクザ抗争に挑む刑事たちの苦悩

2018年06月03日

孤狼の血

©2018「孤狼の血」製作委員会

【出演】役所広司、松坂桃李、真木よう子、中村獅童、竹野内豊、ピエール瀧、石橋蓮司、江口洋介
【監督】白石和彌

見せないものまで見せ切る凄みのある演出

 時は、暴対法が成立する前、7日しかなかった昭和最後の年の前年の昭和63年。場所は広島県の呉原市…これは架空の町だが、台詞は広島弁(呉弁)が飛び交う。冒頭は豚小屋で繰り広げられるリンチ場面で、糞の臭いと血の匂いがたちこめ息苦しさすら感じる。

 原作は柚月裕子の同名小説で、日本推理作家協会賞を受賞したミステリだが、深作欣二監督の「仁義なき戦い」シリーズを強く意識したもので、ヤクザ抗争を絡めた警察小説という印象が強い。

 呉原署の刑事・大上(役所広司)は、サラ金業者の失踪事件に暴力団が関係していることを確信し、カオとコネと人脈を屈指して内偵にあたっている。県警から異動してきた若手キャリアの日置(松坂桃李)を相棒(バディ)としてあてがわれたことが気にくわないが、体良く利用すればと、駒扱いする。日置は大上の強引な捜査手法や凶暴な性格に辟易するが必死に喰らいつく。日置にはひとつの使命があった。

 ヤクザ抗争の構図は比較的分かりやすく、呉原の地場を持つ尾谷組と、広島から進出してきた巨大組織・五十子組傘下の加古組の対立で、小競り合いは次第にエスカレートしていく。大上には尾谷組に太いパイプがあり、金融業者の失踪事件という民間人を巻き込んだ事件を突破口に、加古組の懐に飛び込みたいと画策している。一方、複雑な構図を見せるのは警察組織の方で、署内の刑事間の主導権争いや、県警の上層部も絡むドロドロの駆け引きが見えてくる。

 大上を演じた役所広司は、凶暴な熱と静かな信念をいつもながらの安定感で巧みに演じている。竹野内豊、江口洋介といった主役クラスの役者を脇で使う贅沢さ!なかでも日置の苦悩と狂気を演じた松坂桃李は素晴らしい。おそらく彼の代表作となるだろう。

 白石和彌監督の演出は、見せないものまで見せ切り、目を背けることを許さない凄みが強烈だ。残虐な物語の底辺に微かではあるが“正義”が見えるのが救いになっている。


『孤狼の血』は岐阜CINEXほか、全国で公開中。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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