岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

モンタナの爽やかな風が吹いている、詩情豊かな映画

2024年07月17日

東京カウボーイ

【出演】井浦新、ゴヤ・ロブレス、藤谷文子、ロビン・ワイガート、國村隼
【監督】マーク・マリオット

有能な商社マンであり、素敵なカウボーイだ

本作は、第83回CINEX映画塾で、主演の井浦新さんのトークショー付きの先行上映で初めて観た。大平原と山岳地帯が広がるモンタナの美しい風景そのままに、爽やかな風が吹いているような、全体をほのぼのとした笑いで包み込んだ優しい映画である。

舞台のモンタナ州は、ロバート・レッドフォード監督の『リバー・ランズ・スルー・イット』(1992)や『モンタナの風に抱かれて』(1998)で知られているが、古き良きアメリカを彷彿とさせるような風景に満ち溢れている。

井浦さん演じるサカイヒデキは、現地にある経営不振の牧場を立て直そうと日本からやってきた商社マンである。その切り札として提案したのが、「和牛」の飼育だ。実はこれはそんなに外れてない。

世界的な日本食ブームを受け、「和牛」の人気は世界的に高まっていたが、2010年の口蹄疫、2011年の東日本大震災で和牛が輸出できなかった間に、アメリカやオーストラリアで外国産「WAGYU」の生産が始まった。「霜降り」のレベルも遜色ない段階まできているらしい。

サカイは、M&Aや効率重視を善とする商社のビジネスマンだが、そればっかりを大切にしているわけではなさそうだ。「和牛の専門家」として連れてきたワダ(國村隼)がいきなり骨折して役に立たなくなったこともあり、「郷に入っては郷に従え」に基づいて次第に現地の人たちに溶け込んでいく。

監督のマーク・マリオットは、日本に在住し、山田洋次監督に師事したことがあるそうで、北海道の牧場を舞台にした『遥かなる山の呼び声』(1980)みたいな、詩情豊かで人情味のある作品に仕上がっている。

サカイが牧場の片隅で見つけた「キヌア」に注目したのも、いい目の付け所だ。アンデス地方で古くから食べられている「雑穀」のひとつで、スーパーフードとして世界から注目されているらしい。有能な商社マンであり、素敵なカウボーイである。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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