岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

年寄りでも立つ!ウォーキングロードムービー

2024年07月12日

ハロルド・フライのまさかの旅立ち

© Pilgrimage Films Limited and The British Film Institute 2022

【出演】ジム・ブロードベント、ペネロープ・ウィルトン
【監督】へティ・マクドナルド

身勝手に見えても周りに支えられ想いは届く

「年寄りの冷や水」

これは、年寄りが、歳も弁えずに若いものの真似をすると碌なことがない、という戒めの意味をこめた諺だが、昨今の高齢化社会では、そぐわない言葉になりつつある。というのも、やや強がりで、体力的にはどうにもならない、という抗い難い事実でもあると、素直に認めたり。

定年退職し、今は妻のモーリーンと暮らすハロルド・スミスは、立派な年寄り。平凡な暮らしと言えばそれまでだが、幸せな日常を過ごしている。

ある日、1通の手紙が届く。差出人は、かつてビール工場で一緒に働いていた同僚のクイーニーだった。

便りには、彼女はホスピスに入院中で、余命いくばくもないという現状が書かれていた。

ハロルドは返事をしたため、手紙を出すために家を出るが…突然、気が変わる。

「思い立ったが吉日」

これは物事を始めようと思ったら、すぐに実行した方が良い、という諺だが、この物語では、はじめにふれた "年寄りの冷や水" とセットになっているように思える。

ハロルドはクイーニーに "ある想い" を直接伝えるため、ホスピスに電話をかけ、面会を約束し、家を出た手ぶらのまま、歩き出すことを決める。

家のあるイングランドの南の端から、ホスピスのあるスコットランドの北までは800キロ。年寄りでも思い立ったが今!

原作はレイチェル・ジョイスの小説で、日本でも「ハロルド・フライの思いもよらない巡礼の旅」の題名(現在は映画題名と同じ)で翻訳出版され、2014年の本屋大賞の第2位に選出されている。

ハロルドを演じるのは『アイリス』(リチャード・エアー監督/2001年/日本公開2002年)で、アカデミー賞助演男優賞に輝いた、名優ジム・ブロードベントで、英国人紳士の気品と頑固さを備えた年寄りを逞しく表現している。

類似するお話はないとは言えないけれど、ウォーキングロードムービーはなかったかも?

「後悔先に立たず」

旅の終着には、感動が待っている。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

観てみたい

100%
  • 観たい! (5)
  • 検討する (0)

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

ページトップへ戻る