岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

少女の壮絶な人生に光を当てる人間ドラマ

2024年07月12日

あんのこと

©2023『あんのこと』製作委員会

【出演】河合優実、佐藤二朗、稲垣吾郎、河井青葉、広岡由里子、早見あかり
【監督・脚本】入江悠

今最も旬な女優・河合優実の存在感溢れる好演

この映画はある新聞記事に着想を得ている。

主人公となる香川杏は21歳。ホステスをする母と、足が不自由な祖母と、3人暮らしをしている。

生活は荒んでいて、いつの間にか麻薬の魔力からは脱げ出せなくなり、その金を工面するために、売春をするという、悪循環にはまり込み抜け出せないでいた。

何故、彼女はそんな地の底の生活に堕ちてしまったのか?

杏は幼い頃から、酔っ払った母の暴力を受けて育った。小学4年生の頃には、不登校となってしまう。学ぶことの停止は、彼女の思考能力も奪い、理不尽な母親の言うなりに、売春に手を染めたのは12歳の時だった。

そんな彼女にすくいの手を差し出すのが、刑事の多々良で、一見、声のでかいかだけの無神経なオヤジは、職務の領域を超えて杏に寄り添うようになる。

「まず、売春をやめろ」

そして、仕事の手配から、住いの世話まで、杏の新たな生活のための模索が始まる。

杏を演じる河合優実は、2020年の秋に公開(CINEXでも)された『喜劇 愛妻物語』(足立紳・監督)で、強烈な印象を残す。と言っても、この映画を観た段階では、まだ彼女を河合優実と認識していたわけではなく、その後、続いた出演作での存在感と演技を確認した後の、再認識だったのだが…その役は、"高速でうどんを打つ女子高生" …誤解を承知の上で言えば、どんな役でもしっかりとした足跡を残す。

杏の世話に邁進する多々良を見て、友人でもあるジャーナリストの桐野が、助力の手を差し出す。

杏の新生活に明るい兆しが見え始めた矢先、世間をコロナ禍が襲い、3人はすれ違い、不安と孤独の暗い影に覆われる。

"現実を見よ!" と言う、強いメッセージは伝わるが、根底にある虐待を敢えて杏の悲惨な青春に繋げ、不幸を煽って見せ、更にコロナ禍を被せる方法、過度な残酷さの提示に、やり過ぎという疑問を感じるのは穿った意見だろうか?

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

観てみたい

100%
  • 観たい! (6)
  • 検討する (0)

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

ページトップへ戻る