岐阜新聞 映画部

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2018年05月24日

空海 KU-KAI 美しき王妃の謎

©2017NewClassicsMedia,KadokawaCorporation,EmperorMotionPictures,Shengkai Film

【出演】染谷将太、ホアン・シュアン、チャン・ロンロン、火野正平、松坂慶子、キティ・チャン、チン・ハオ、リウ・ハオラン、チャン・ルーイー、阿部寛
【監督】チェン・カイコー

 中国を代表する映画監督のチェン・カイコーが総製作費150億円をかけて作った本作は、真言宗の開祖・空海の唐における密教習得を描いた映画ではない。歴史シュミレーションゲーム「信長の野望」のような伝奇ロマンであり、名探偵・空海(染谷将太)とその助手・白楽天(ホアン・シュアン)がホームズ、ワトソン並みに楊貴妃の死の真相を探る歴史ミステリーである。中国での原題は「妖猫伝」であり、邦題を「猫は知っていた」とした方が、この映画の内容を端的に表していると思う。大河ドラマを期待すると裏切られ感が強いが、壮大な謎解きミステリーとしてみれば、チェン・カイコー監督作の「珍品」として楽しむことができる。

 西暦800年代初期、唐の都・長安では権力者が次々と謎の死を遂げていた。空海、白楽天のバディコンビが背景を探っていくと、しゃべる黒猫が登場する。この黒猫が妖術を使って大量殺人を犯していくわけだが、妖猫は怪事件や楊貴妃の死の真相など重要なセリフをどんどん喋っていく。それに対して、どんな危機でも全く動揺することなく、終始ニヤニヤした訳知り顔の空海がドンピシャの推理をしていく。空海は殺人を止めるわけでなく、事件に絡む背景を推理し検証していくというスタイルなので、ホームズというより金田一耕助に近い探偵だ。映画の中で何度か登場する謎の西瓜売りが、実は…という、遠山の金さんばりのシチュエーションもあり、コテコテのご都合主義として笑わせる。

 日記によってヒントをもたらしてくれる阿倍仲麻呂(阿部寛)が古代ローマ人に見えてきてしまうのは見る側の問題だが、絶世の美女・楊貴妃(チャン・ロンロン)を含め、美男美女を揃えた豪華俳優陣に、6年がかりで作ったという長安のセットの華麗さは目を見張るものがあり、中国映画ならではである。「とんでも映画」好きの私としては、「珍作」として楽しめた愉快な映画であった。


『空海 KU-KAI 美しき王妃の謎』は岐阜CINEXほか、全国で公開中。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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