岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

ヨーロッパ=フランスに巣食う移民問題の再びの提示

2024年07月01日

バティモン5 望まれざる者

© SRAB FILMS - LYLY FILMS - FRANCE 2 CINÉMA - PANACHE PRODUCTIONS - LA COMPAGNIE CINÉMATOGRAPHIQUE – 2023

【出演】アンタ・ディアウ、アレクシス・マネンティ、アリストート・ルインドゥラ、スティーヴ・ティアンチュー、オレリア・プティ、ジャンヌ・バリバール
【監督・脚本】ラジ・リ

表面的なグローバル化に感じる違和感と現実

グローバル化で映画も変わった。

例えば、アメリカ映画界では、アカデミー賞での白人優位の選考が問題視された。

今年、3月に発表されたアカデミー賞は96回という長い歴史がある映画賞だが、白人以外の受賞者は極めて少ない。俗に言う "白すぎるアカデミー賞"。

そこで作られたのが4本の柱からなる基準で、これを少なくとも2つ満たさなければ、アカデミー賞(作品賞)の資格が得られないというもの。

長くなるので詳細は端折るが、要するに、黒人、アジア人、ネイティブアメリカン、中近東を含む北アフリカ系、ネイティブハワイアンなどの少数派の人種、及び、女性、LGBTQ、障害を持つ人をキャストに入れるか、それに則した内容を持つ映画でなければならない、という基準。

今、これは評価されるべきものなのか?

基準はなくとも、世間はすっかりグローバル…。

最近のヨーロッパ映画で顕著なのは、移民の存在である。

『バディモン5 望まれざる者』のラ・ジリ監督は、前作『レ・ミゼラブル』(2019年/日本公開2020年)で、パリ郊外のモンフェルメイユを舞台に、人種、宗教、世代、思想が混沌とする状況下、官憲との対立によって暴発していく様を、鮮烈に力強く描き、フランスの貧困層を含む移民の存在を社会問題として取り上げ、高い評価を獲得した。

ラ・ジリ監督の両親はアフリカのマリ共和国出身者で、自身もマリで生まれたという経歴を持ち、育った地もモンフェルメイユという、私映画の構造だった。

本作でもそのテイストは変わらない。"バディモン5" は、パリ郊外の労働者階級の移民が多く暮らす地域の通称である。

冒頭、再開発による老朽化団地の爆破シーンから始まる。その式典の最中、市長が急死し、新たに臨時市長が就任。地域住民との対立は激化していく。

物語をやや作り過ぎたきらいがあり、パワーは弱まった感が否めないが、メッセージは伝わる。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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