岐阜新聞 映画部

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「不都合な真実」を、白日の下に晒した衝撃の映画

2024年07月01日

人間の境界

©2023 Metro Lato Sp. z o.o., Blick Productions SAS, Marlene Film Production s.r.o., Beluga Tree SA, Canal+ Polska S.A., dFlights Sp. z o.o., Česká televize, Mazovia Institute of Culture

【出演】ジャラル・アルタウィル、マヤ・オスタシェフスカ
【監督】アグニエシュカ・ホランド

「人間兵器」とよばれる人々の過酷な運命

EU(欧州連合)加盟諸国は、もともとは労働力不足の側面もあって移民の受け入れに積極的であり、危険や迫害から逃れてきた難民を保護する人道主義的伝統を持っている。最近では移民を排斥する右翼ポピュリズム政党が蔓延っているものの、基本的には共存している。

その人道主義を逆手にとって、ベラルーシ政府が「ベラルーシに来れば、ポーランド経由でヨーロッパに入れる」とブローカーを通じて人々を募り、中東系の大量難民をポーランドへ送りつけるという卑劣な手段でEUに揺さぶりをかけたのが、本作で取り上げられた事件だ。

送り付けられる側のポーランド政府も、助けを求める難民を、国境警備隊が追い返すという非人道的な扱いを行っていた。

『人間の境界』は、「人間兵器」とよばれる策略に翻弄された人々の過酷な運命を描き、その隠された実態を映像によって告発したポーランドの巨匠アグニエシュカ・ホランドの実録映画である。

この問題が顕在化したのは2021年11月頃、翌2022年2月にロシアのウクライナ侵攻が始まったことでウクライナからの戦争難民を受け入れたのに、中東の人たちにはそうでなかったのが実にいやらしいのだが、アグニエシュカ・ホランドは率直な怒りをぶつける。

映画は、シリア人難民家族、支援活動家、国境警備隊の青年などの複数の視点から描かれ、それぞれのカテゴリーの中でも様々な立場の人たちを登場させることによって、重層的な構造となっており一方的にはなっていない。

国境警備隊員のヤンの葛藤や、難民支援の活動に身を投じる精神科医のユリアの奮闘など、難民を「人」としてみる当たり前の観点に、希望の光がみえてくる。

手持ちカメラによるモノクロームの映像は生々しく、あたかもドキュメンタリーのような作りとなっており、緊迫感が伝わってくる。

ポーランド政府による「不都合な真実」を、白日の下に晒した衝撃の映画である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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