岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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アイヌの少女の生涯を描いた、力強い叙事詩

2024年07月01日

カムイのうた

©シネボイス

【出演】吉田美月喜、望月歩、島田歌穂、清水美砂、加藤雅也
【監督・脚本】菅原浩志

美しく奏でられるユカラ(詩物語)の歌声

アイヌは、主に北海道を中心とするエリアに暮らしてきた先住民族である。彼らはコタンと呼ばれる集団を形成し、日本語とは異なる言語体系を持ち、漁撈・狩猟・採集等を中心とする生活を営みながら、伝統的な宗教的儀式や祭事など独自の文化を育んできた。

しかし明治政府による北海道の開拓により居住地を奪われ、伝統的風俗・習慣の禁止、日本語使用の強制など同化政策が推進されていき、戸籍法によって日本人とされた。

政府はアイヌ民族の生活困窮を救済するという目的で、1899年「北海道旧土人保護法」を制定したが、この差別的な名称の法律が廃止されたのは実に1997年のことだ。

日本政府がアイヌ民族を先住民族と正式に認定したのは、2008年の「アイヌ民族を先住民族とすることを求める(国会)決議」(衆参両議院全会一致)まで待たなければならない。

『カムイのうた』は、差別や迫害が激しかった大正年間の1917年、アイヌとして初めて女子職業学校に進学した北里テル(モデル=知里幸恵)の、短いながらも懸命に生きた生涯(1903~1922)を描く、力強い叙事詩である。

アイヌ語で、アイヌは人間、カムイは神という意味で、『カムイのうた』とは「神の詩」である。テル(吉田美月喜)は、幼いころから叔母イヌイェマツ(島田歌穂)の歌う、ユカラ(詩物語)を聴いて育っていた。文字を持たないアイヌ文化を研究する、アイヌ語学者兼田教授(加藤雅也、モデル=金田一京助)の勧めで、ユカラの口承を初めて日本語に訳した。

映像は、北海道におけるアイヌ民族の苦難を、圧倒的な描写で焼き付けていく。極寒の中をニシンを背負って行くシーンなど、かの『八甲田山』を彷彿とさせる迫力であるし、季節の中で移りゆく草木と生物の生態は、自然と共生するアイヌ民族そのものである。

         『ゴールデンカムイ』を観た方は、こちらも是非ご覧ください。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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